もっと知る腎がん

第6回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜

 根治的腎摘除術、腎部分切除術のどちらの場合においても、腎がんを切除する際のアプローチ法が2つある。1つは消化器系の臓器を包み込む腹膜を切り開いて(開腹膜=開腹)手術を行う「経腹膜的アプローチ」、もう1つは開腹はせずに腰部から切開して手術する「経腰的アプローチ」だ(図6)。腎臓は胃などの消化器系の臓器と異なり、腹膜の外にあるため、本来は腹膜を切る必要がない。しかし、腹膜的アプローチは患者が上を向いた状態(仰臥位)で手術するため、標的とする腎臓が非常に良く見える上に、手術作業スペースが広くて手術しやすいというメリットがある。一方で、腹膜を切るため、腹腔内臓器の損傷や、術後に腸閉塞となるリスクがあるほか、術後に食事を再開するまでに時間がかかるなどのデメリットがある。

 これに対し、経腰的アプローチは、患者が横向き(側臥位)になり、身体の後方から皮膚を切開して手術を行う。経腹膜的アプローチと比べ、腹膜を切る必要がないため、腹腔内臓器を損傷するリスクが少なく、早期に食事を再開できるというメリットがある。また、動脈が見やすい点もメリットの1つだ。一方で、身体の後方からアプローチするため、まず肋骨を切除する必要があり、それでも手術スペースとしては狭く、腎臓が見えにくいというデメリットがある。患者の腫瘍の状態や身体状態に応じて、腎臓へのアプローチ方法を使い分けている。

図6 経腹膜的アプローチと経腰的アプローチの違い

 例えば、4cm未満と腫瘍が比較的小さい患者については経腹膜的アプローチ、経腰的アプローチのどちらでも選択可能だが、腎臓に腫瘍が埋没しているタイプについて腎部分切除術を行う場合は、安全性の観点から経腹膜的アプローチが推奨されると釜井氏は説明。腫瘍が4cm以上と大きい場合、基本的には経腹膜的アプローチを選択するが、経腰的アプローチによる手術経験が豊富な施設ではどちらでも選択可能だとした。

 さらに、手術方法として、腹部を大きく切開する術式(開放手術)と、腹部を小さく切って内視鏡を挿入して実施する術式(腹腔鏡手術)の2つがある。釜井氏はこの2つの術式の違いとして、使用する機器が違うだけでなく、術者からの標的臓器である腎臓の見え方が大きく異なることを説明した。開放手術は、術者が直視で周囲臓器を確認しながら腎臓にアプローチする。一方、腹腔鏡手術は一部分を拡大して見ながら手術を行うため、微細な構造を明瞭に見ることができるが、周辺臓器が見えないという特徴がある。

 釜井氏は開放手術、腹腔鏡手術を選択する基準についても解説。腫瘍が4cm未満と比較的小さい患者については開放手術、腹腔鏡手術のどちらでも選択可能だが、4cm未満であっても腎臓に腫瘍が埋没しているタイプにおいて腎部分切除術を選択する場合は、安全性を担保するため開放手術が推奨されるとした。腫瘍が4cm以上と大きい場合については基本的には開放手術が勧められるが、手術経験が豊富な施設では内視鏡手術も選択肢に入ると紹介した。

 最後に釜井氏は、「従来は、腎がんであるとどんな時でも腎臓を全て摘出していた。しかし、今は、患者1人1人の腫瘍の位置や大きさなどに応じて術式を選んでいる。その理由は、がんの根治手術(がんを取り切ること)を目指すと同時に、できるだけ体への負担を減らすこと、安全で侵襲の少ない手術を目指しているためだ」と強調した。