もっと知る腎がん

第6回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜

東京女子医科大学付属青山病院泌尿器科部長の前田佳子氏

●家族性あるいは遺伝性腎がん
―遺伝する腎がんは20歳から定期的な画像診断を―
前田 佳子氏(東京女子医科大学付属青山病院 泌尿器科 部長)


 通常、腎がんは遺伝しないが、腎がんの一部にはフォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)が原因で発生するものがあり、これが遺伝性腎がんの代表的疾患である。VHL病は、生まれつきがん抑制遺伝子であるVHL遺伝子に異常がある疾患のこと。

 ヒトの染色体は23対(46本)である。第3染色体に1対(2つ)のVHL遺伝子が存在してがんを抑制している。そのため、一方のVHL遺伝子が働かなくなったとしても、もう一方が正常に機能していれば、がんを抑制することができる。だが、生まれつき2つのうち1つのVHL遺伝子に異常を持っているVHL病の場合、もう一方のVHL遺伝子に異常が起こるとがんが発生することが明らかになっている。

 腎がんの好発年齢は55〜80歳であるのに対し、VHL病で腎がんが発見される年齢は平均38歳と若年であることが特徴だ(図4)。そのほかの特徴としては、VHL病の血縁者の4割で腎がんが発生すること、両方の腎臓に多発性に発生することが多いこと―、などが知られている。

 これらの特徴を踏まえ前田氏は、「VHL病の患者は、20歳前から定期的に画像診断を受けることを心がけ、腎がんを早期に発見することが大切」とアドバイスした。

図4 VHL病で腎がんが発見される年齢

獨協医科大学泌尿器科教授の釜井隆男氏

●どのような手術がありますか?
―患者の状態に合わせて術式を選択することで根治を目指す―
釜井 隆男氏(獨協医科大学泌尿器科 教授)


 腎がん治療の基本は、腎がんを外科的に切除してしまうことだ。

 ただし、体格、性別、年齢、腫瘍の位置や大きさなどが異なるため、患者の状態によって最適な手術法(術式)を選ぶことになる。

 腎がんの外科的切除法には、大きく分けて2つあり、がんがある腎臓を全て取り除く「根治的腎摘除術」と、がんがある部分だけを取り除く「腎部分切除術(腎機能温存手術)」がある(図5)。

図5 根治的腎切除術(上)と腎部分切除術(下)の模式図

 術式を選択する際には、腫瘍の大きさと位置で考える(表4)。4cm以上の大きな腫瘍の場合は、根治的腎摘除術を行う。腫瘍が4cm未満と比較的小さい場合は、腫瘍の位置によって術式を選択する。一般的には、腫瘍が腎臓の外側に飛び出すように存在する場合は腎部分切除術を選択するが、腫瘍が腎臓内に埋没している場合は腫瘍の摘出が難しいため、根治的全摘除術を選択する。しかし、場合によっては、腎部分切除術を検討することもある。腎部分切除術を検討するのは、できるだけ腎機能を残そうとするのは、腎機能が低下すると慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高まってしまうためだ。しかし、CKDを予防するために、腫瘍を十分に切除できなければ本末転倒になるため、がんの状態を見て、どの術式が最適か十分に検討される。

表4 腫瘍サイズ、腫瘍の位置により推奨される術式