もっと知る腎がん

第6回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜

九州大学泌尿器科学分野教授の内藤誠二氏

 腎癌研究会は7月28日、「腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜」をテーマに宮城県仙台市で第6回市民公開講座を開催した。205人が参加した同市民公開講座をリポートする。


【開会のあいさつ 
内藤誠二氏 九州大学泌尿器科学分野教授・腎癌研究会会長・日本泌尿器科学会理事長】


 始めに、腎癌研究会会長の内藤誠二氏(九州大学泌尿器科学分野教授・日本泌尿器科学会理事長)が開会の挨拶を行い、腎癌研究会の活動内容について紹介した。

 腎癌研究会は1991年に設立され、20年以上が経過している。現在の会員数はおよそ640人で、全国の泌尿器科医や病理医などが所属している。

 同研究会ではこれまでに、今回のような市民公開講座の開催や小冊子を作成・配布するなどして腎がんの啓発活動を行っているほか、研究会の開催、多施設共同研究、海外との国際交流などを実施している。

 最後に内藤氏は、来年の第7回市民公開講座は岡山市で開催される予定であることも紹介した。


山形大学泌尿器科教授の冨田善彦氏

【第1部 講演】
【総合司会:冨田善彦氏 山形大学泌尿器科教授】



 第1部は、腎がん治療のエキスパートである泌尿器科医5人が、腎がんの特徴、診断から治療法までを分かりやすく解説した。総合司会は、第6回市民公開講座実行委員長である山形大学泌尿器科教授の冨田善彦氏が務めた。















福島県立医科大学泌尿器科准教授の石橋啓氏

●総論:腎がんとはどのような病気ですか?
―患者数は年々増加、男性の方が発症頻度が高い―
石橋 啓氏(福島県立医科大学泌尿器科 准教授)


 1つ1つの細胞内には、遺伝情報を持つDNAからなる染色体が23対46本あるが、このうち3番染色体の末端にある「VHL遺伝子」という遺伝子に傷が付くと、腎がんの発生リスクが高まると考えられている。

 このVHL遺伝子はがん抑制遺伝子の1つで、腎細胞のがん化を抑制する働きを持つたんぱく質を産生している。VHL遺伝子に傷が付くと細胞ががん化することにブレーキがかけられなくなるため、腎がんの発生リスクが高まると考えられている。VHL遺伝子に傷を付ける原因としては、喫煙、肥満、高血圧が報告されている。

 日本の腎がん患者数は年々増加しており、1975年に比べて2005年は5〜6倍増えている。高齢になるほど腎がん発生頻度が高まることが知られており、罹患ピーク年齢は70歳だ。また、男性の腎がん発生頻度は女性よりも2〜3倍高い(図1)。

図1 年齢別の腎がんにかかる頻度

 腎臓に発生する腫瘍のうち、腎実質部分(血液をろ過する働きを担う腎臓の主要な部分)にできた腫瘍を腎がんと呼ぶ(腎細胞がんと言う)。そのほか、腎臓からの尿が集まる部位である腎盂にできるがんについては「腎盂がん」と呼ぶが、腎がんとは性質も治療内容も異なる腫瘍として扱われる。また、腎実質に発生する良性腫瘍として血管筋脂肪腫などもある(図2)。

図2 腎臓に発生する主な腫瘍

 腎がん患者に見られる主な3つの症状は「血尿」「痛み」「腫瘤が触れる」で、このほかに全身倦怠感、体重減少、貧血、発熱などがある。

 腎がんが局所にとどまっている場合、基本的には外科的手術を行い、がんを摘除(腎臓ごと摘除、もしくは腎臓のうち腫瘍がある部分だけを摘除)する。手術による摘除が難しい場合や、多数の転移が認められ手術が適していないと考えられた場合などは、インターフェロン-α(IFN-α)やインターロイキ-2(IL-2)などによる免疫療法、分子標的治療薬による治療、転移巣に放射線を照射する放射線治療を行う(表1)。

表1 腎がんの主な治療法と予防

 腎がんを予防するためには、がん抑制遺伝子であるVHL遺伝子を傷つける危険因子を避けることが重要となる。禁煙はとても重要で、遺伝子を傷つける活性酸素を除去するために抗酸化物質を含む野菜や果物、ビタミンCなどを積極的に摂取することが腎がんの予防につながると考えられている。