もっと知る腎がん

腎癌研究会第5回市民公開講座より

もっと腎がんのことを知って欲しい

名古屋大学泌尿器科講師の吉野能氏

●「腎摘除術後に単腎となった場合、どんな合併症があるか」
「腎がんの術後で、日常生活における注意事項はあるか」
―術後は食塩やたんぱく質の摂取量に注意を―
回答者:吉野 能氏(名古屋大学 泌尿器科講師)


 「腎摘除術後に単腎となった場合、どんな合併症がありますか。透析が必要にならないか不安です」という質問に対しては、名古屋大学泌尿器科講師の吉野能氏が回答した。腎摘除術後の多くの患者で腎機能は低下しておらず、術後5年間で腎機能が低下した患者は26%にとどまったことを説明した。腎機能が大きく悪化した患者の特徴としては、術前から降圧剤を内服している患者や、術後6カ月時点で尿たんぱくが確認された患者だった。

 さらに吉野氏は、腎臓に関する主な検査結果の見方について解説した(表5)。腎臓の働きについては尿たんぱく、血清クレアチニン、eGFRが表しており、これらの項目を正常値にするためには、肥満を防ぐことや血圧を上げないこと、適度な水分補給や運動を行うとよいとした。また、老廃物については、尿素窒素(BUN)と尿素(UA)が、酸・イオンのバランスはクロール(Cl)とカリウム(K)が、貧血についてはヘモグロビン(Hb)が示しており、これらの値は薬剤で調整する必要があるとした。

●表5 腎臓に関する主な検査結果の見方

 「腎がんの術後で、日常生活における注意事項はあるか」という質問に対しては、食事では食塩やたんぱく質を制限することのほか、通常の運動であれば実施してよいとした。食塩の制限については、男性では1日9g未満、女性では7.5g未満を目標にするほか、たんぱく質制限については、高血圧や腎臓病の人では体重あたり0.8g、腎臓の悪い人では体重あたり0.5〜0.6gにするようアドバイスした。

愛知医科大学泌尿器科教授の住友誠氏

●腎がんのフォローアップ方法について
―術後10年以上の経過観察が必要―
回答者:住友 誠氏(愛知医科大学 泌尿器科教授)


 愛知医科大学泌尿器科教授の住友誠氏は、腎がんのフォローアップについて説明した。根治的腎摘除術を実施した、転移がない腎がん患者における再発率は約3割で、患者の半数以上は術後2年以内に発症している。しかし、術後10年以上経過後に再発するケースもあることから、術後10年以上の経過観察が必要であると語った。

 また、日本における再発腎がん患者の1年生存率は64.2%、3年生存率は35.2%と、海外と比べて良好な成績が報告されている(図7)ことを示し、「これは術後のフォローアップが日本ではしっかりと行われているために早期に再発がんが見つかり、結果的として良好な経過が見られることが多いのではないか」と指摘した。

●図7 転移性腎細胞がん患者(1463人)の全生存率

 住友氏の所属する施設では、術後フォローアップとして、術後1年間は年3回の胸腹部CT検査と採血を実施している。術後2〜5年では年2回の胸腹部CT検査と採血、術後6〜10年ではの年1回の胸腹部CT検査と採血を行うように心がけていることを紹介した。

 最後に住友氏は、医師とじっくりと相談し、術後も定期的に外来を受診するようアドバイスした。



日本医科大学泌尿器科准教授の木村剛氏

【閉会のあいさつ】
木村剛氏(日本医科大学 泌尿器科准教授・腎癌研究会世話人代表)


 会のおわりには、腎癌研究会世話人代表の木村剛氏が挨拶した。5年目となった今年の市民公開講座だが、毎年寄せられる参加者のご意見をもとに改善を重ねてきたことを報告した。「皆さんに腎がんのことをより理解していただけるよう努力をしているが、まだまだ足りないところもある。今日の会についてもぜひご意見をいただき、さらに改善していきたい」と語った。



 なお、本市民公開講座は、共催:腎癌研究会、バイエル薬品株式会社、大日本住友製薬株式会社、中日新聞社、後援:愛知県、名古屋市、愛知県医師会、名古屋市医師会、愛知県泌尿器科医会、日本腎臓財団、日本対がん協会により行われた。