もっと知る腎がん

腎癌研究会第5回市民公開講座より

もっと腎がんのことを知って欲しい

京都大学泌尿器科講師の神波大己氏

●どのようなくすりで治療しますか?
―医師との連携体制で副作用に対応することが重要―
神波 大己氏(京都大学 泌尿器科 講師)


 腎がん治療ではまず腎臓の外科的切除を検討するが、手術ができない患者や、初診時または腎臓摘出後に腎臓以外の臓器に転移していた患者については薬物療法を行う。ただし、転移していても、健康状態が良く、進行が穏やかで、転移個数が数個であるといった条件がそろえば外科的切除を行うこともある。

 腎がんにはいわゆる抗がん剤が効かない。そのため、サイトカインまたは分子標的治療薬が使用される。

 サイトカインは患者の体の免疫力を高める薬剤で、腎がん治療ではインターフェロン-α(IFN-α)とインターロイキン-2(IL-2)が使用される。IFN-αは、体内にウイルスなどの病原体が侵入したり、腫瘍細胞が発生した場合に白血球が分泌するたんぱく質のこと。IL-2は、白血球のうちTリンパ球によって分泌されるたんぱく質で、Tリンパ球の増殖因子として働く。IFN-αには天然型の製品(製品名:スミフェロン、オーアイエフ)と遺伝子組み換え型(製品名:イントロンA)がある。筋肉注射または皮下注射のため、患者による自己注射が可能で、週3〜5回注射する。一方、IL-2にはイムネースという製品があるが、こちらは静脈注射のため、患者が自己注射することはできない。週5回の頻度で注射する。

 これらの薬剤で治療した際に腫瘍が小さくなる確率(奏効率)は10〜20%。肺やリンパ節転移している患者で治療効果が得られやすい一方、骨や肝臓、脳への転移患者では治療効果が見られにくいなどの特徴がある。

 神波氏は、サイトカイン療法を受ける際の留意点として、高熱、疲労感や関節の痛み、IL-2を投与した際にはむくみや息苦しさを感じることがあるので、医師との連絡体制を整えることが重要であると語った。

 続いて、分子標的治療薬についても解説した。分子標的治療薬は、がん細胞が作り出す特定の分子(たんぱく質)を標的にした薬剤で、その働きを阻害することでがん細胞が増殖、転移できないようにする。腎がんでは、血管内皮成長因子(VEGF)や、細胞の分裂や生存の調節で中心的な役割を果たすmTORを標的にした分子標的治療薬がある。現在、使用可能な薬剤は合計5剤で、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害作用を持つ3剤(ソラフェニブ[製品名:ネクサバール]、スニチニブ[製品名:スーテント]、アキシチニブ[製品名:インライタ])、mTOR阻害薬としてはテムシロリムス(製品名:トーリセル)、エベロリムス(製品名:アフィニトール)の2剤だ。

 これら分子標的治療薬で治療する際の方針はガイドラインで示されており、初めて治療する患者のうち、比較的進行が穏やかな患者(低・中リスク)の場合はスニチニブ、進行が急な患者(高リスク)の場合はテムシロリムスの投与が推奨されている(表2)。また、すでに1回目の治療を行っている患者のうち、サイトカイン療法が無効になった場合にはソラフェニブまたはアキシチニブ、チロシンキナーゼ阻害薬が無効になった患者にはエベロリムスまたはアキシチニブ、mTOR阻害薬が無効になった患者には臨床試験への参加が勧められている。

●表2 腎がんの分子標的治療薬の使い方の指針

 分子標的治療薬で見られる主な副作用としては、ソラフェニブは手足症候群、下痢、疲労感、スニチニブは皮膚変色、高血圧、甲状腺機能低下、血小板減少、心機能低下、テムシロリムスやエベロリムスは間質性肺炎や感染症、糖尿病、高脂血症などが見られる。

 神波氏は、分子標的治療薬による治療を受ける際にはこうした副作用に十分に注意した上で、(1)服薬手帳をつけること(2)毎日決まった時間に血圧を測定すること(3)締め付けの強い靴や靴下をはかないこと(4)手足の保湿を行うこと(5)日常の変化を記録すること――を行うよう患者にアドバイスし、医師との連絡体制を整えることが重要であると語った(表3)。

●表3 分子標的治療を受ける場合の留意点(神波氏による)