もっと知る腎がん

腎癌研究会第5回市民公開講座より

もっと腎がんのことを知って欲しい

福田泌尿器科皮フ科クリニック院長の福田百邦氏

●腎がんはどのように見つかりますか?
―検診や他疾患管理中に腎がんが発見されるケースが増加―
福田百邦氏(福田泌尿器科皮フ科クリニック院長)


 腎がんは、その見つかり方により、(1)偶発がん(2)尿路症状がん(3)尿路外症状がん――の3つに分類される。このうち、偶発がんの予後が最も良い。

 (1)の偶発がんは、腎がんの症状が出る前に健康診断で発見、またはほかの病気の経過観察中に超音波検査やCT検査によって見つかった腎がんのことを指す。発見時の平均腫瘍径は4〜5cmほど。(2)の尿路症状がんとは、腎臓のある場所に痛みが感じられる状態のことで、血尿が出たり、腹部に腫瘍が触れた状態になる。腎がんの発生から平均2〜3年を経て発見されることが多く、発見時の腫瘍径は約7cmだ。(3)の尿路外症状がんは、さらに腎がんが進行した状態で、転移症状や、様々な全身症状が見られる。具体的な転移症状としては、リンパの流れがせき止められることによる足のむくみ、肺転移の場合は咳や血痰、呼吸困難、骨転移の場合は骨の痛みや麻痺、脳転移の場合は嘔吐や頭痛、意識障害など。主な全身症状には、発熱や全身倦怠感、体重減少、食欲不振、嘔吐、便秘や下痢など。腎がん発生から平均2年5ヶ月から4年2ヶ月を経て発見されることが多く、腫瘍平均径は約8cmだ。

 偶発がんの占める割合は、CTや超音波装置による検査が普及しはじめた頃から急増した。1975〜1984年の腎がん患者における偶発がんの占める割合は5%にすぎなかったが、1985〜1994年では35%、2005年以降は8割弱を占めるに至っている(図2)。

●図2 時代別の腎がん症状の内訳(福田氏による)

 福田氏がここ3年間で診療した患者を対象に、腎がんが発見されたきっかけを調べたところ、検診や人間ドックで発見されたケースと他疾患の管理中に発見されたケースをあわせた偶発がんの割合は85%を占めた(図3)。「偶発がんでも、検診やドックで見つかるケースより、他の疾患を管理中に腎がんが発見されるケースが多くなってきている」と説明した。

●図3 最近3年の腎がんが発見されたきっかけ(102人、福田氏による)

 福田氏は、腎がんの予後を改善するためには、症状がより軽い偶発がんの状態で発見することが大事であると強調。健康診断で必ず超音波検査は受けるように求めたほか、他の病気を治療中にCTやMRIの撮影を勧められた場合は、積極的に検査を受けるようアドバイスした。また、血尿を指摘された場合は、泌尿器科を受診するようお願いした。

東京女子医科大学付属青山病院泌尿器科部長の前田佳子氏

●家族性あるいは遺伝性腎がん
―遺伝する腎がんは若い時からの定期的な画像診断が重要に―
前田 佳子氏(東京女子医科大学付属青山病院 泌尿器科 部長)


 通常、腎がんは遺伝しない疾患とされているが、腎がんの一部にはフォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)などの遺伝する腎がんがある。VHL病は、がん抑制遺伝子であるVHL遺伝子が働かなくなることで、腎臓や中枢神経に腫瘍やのう胞が多発する疾患で、腎がんの発生リスクが約100倍上昇することが知られている。

 腎がんの好発年齢は55〜80歳であるのに対し(図4)、VHL病が原因の腎がんの場合は平均38歳で発見される(図5)。また、VHL病の血縁者の場合、その4割で腎がんが発生し、若年患者が多く、腎がんが両側に多発するという特徴を持つ。

 これらの特徴を踏まえ前田氏は、「VHL病の患者は、若い時から定期的な画像診断を心がけ、腎がんの早期発見をすることが大切」とアドバイスした。

●図4 腎がんの罹患率

●図5 VHL病で腎がんが発見される年齢