もっと知る腎がん

第100回日本泌尿器科学会総会に参加して

転移があっても治療の選択肢はあるのであきらめないでください

術前に分子標的薬を投与することが有効である可能性も

 腫瘍縮小効果が高い分子標的薬が登場したことで、手術前に分子標的薬を投与し、その後、腫瘍が小さくなってきた段階で腎摘除術、あるいは転移巣を切除しようという術前投与(presurgical therapy)が、今までになかった集学的治療法として実臨床で試みられています。

 昨年には、腎摘除術を行う前に分子標的薬であるスニチニブを投与し、その後、腎摘出術を行うという海外の臨床試験の結果が発表されました。この試験では、約7割の患者さんがスニチニブ治療で効果が得られて腎摘出術を行っています。そして、スニチニブ治療によって腫瘍が縮小したグループは生存期間が長いことが示されました。

 この試験では、術前にスニチニブ投与をしたグループとしなかったグループを分けて検討したものではないので確定的なことは言えませんが、術前に分子標的薬を使うと手術の予後を向上させられる可能性があり、今後の検討が楽しみです。

 現時点で、進行性腎がんに対する外科的切除を考慮した治療アルゴリズムとして、私は下図のように考えています。分子標的薬の効果をうまく活用しながら、病巣を完全切除することが目的です。外科的切除ができない場合には、分子標的薬を順序よくつないで加療する逐次治療で生存期間を延長させるように努めます。

進行性腎細胞がんに対する外科的治療を考えた治療アルゴリズム(日本医科大学泌尿器科准教授 木村剛氏による)(画像をクリックすると拡大します)

 このように、残念ながら転移があるような進行性の腎細胞がんであっても、我々が患者さんに提案できる治療の選択肢は多くなってきましたし、今後、さらに選択肢は増えていくでしょう。患者さんには、是非ともご自身の状態を知り、治療に前向きに取り組んでいただきたいと思います。