もっと知る腎がん

第100回日本泌尿器科学会総会に参加して

転移があっても治療の選択肢はあるのであきらめないでください

 日本の泌尿器科領域における最新の研究結果が発表される日本泌尿器科学会総会が、4月末に開催された。本サイトの監修者の1人である日本医科大学泌尿器科准教授の木村剛氏に、腎がん診療の動向について聞いた。


 4月20日から横浜市で開催された日本泌尿器科学会総会に参加しました。今年で100回目となった今回の総会では、現在泌尿器科医が扱っている疾患や研究テーマがもれなく網羅され、議論されました。

 私が司会を担当した卒後教育プログラムセッションでは、進行性腎がんに対する外科的切除の意義に関してディスカッションしました。

 進行性腎細胞がん治療のゴールは生存期間(Overall Survival、OS)の延長とQOL(生活の質)の改善です。そして、OSの延長やQOLの改善を得るためには、外科手術、薬物治療、放射線治療など、患者さんの状態に応じて必要な治療法を組み合わせる治療(集学的治療と言います)が必要なのですが、中でも最も効果的なのは外科手術であることを是非知っておいていただきたいと思います。

転移があっても腎摘除術を行うと予後が良好

 2011年10月に発行された腎癌診療ガイドライン2011年版では、他臓器に転移があっても、腎摘除術が推奨されています。まず大本である腎がんを切除しようということです。

 この推奨の根拠は、転移がある患者さんを対象に、腎摘除術を行った後にサイトカイン療法を行った場合と、腎摘除術は行わずサイトカイン療法だけを行った場合とで生存期間を比較した試験の結果に基づいています。この試験では、サイトカイン療法だけ行った場合よりも、腎摘除術を行ってサイトカイン療法を行った方が生存期間において6カ月間(中央値)長いという結果が得られました。

 原発巣を切除することの意義として、まず、新しい転移の元となるがん細胞の供給源を減らすことが挙げられます。がんの塊がいつまでも体内にあると、そこから血流を介してがん細胞が他の臓器に移行し、そこでも増殖してしまう可能性があるからです。少しでも多くのがんの塊を体内から取り除けば、それだけ転移の供給源を絶つことになります。

 また、がんが産生する物質には免疫系を抑制するものがあります。そのため、がんを排除しようとする本来持っている腫瘍免疫の力のみならず、免疫療法の効果を弱めたりします。

 さらに、がんが産生する物質には、体調を悪くし、健康感を損なうものがあります。特に、がんの産生する炎症を引き起こす物質が重要で、熱を出させたり、体をだるくさせたりします。私自身、多くの患者さんに対して腎摘除術を行っていますが、手術前は非常に体調が悪かったのに、原発巣を切除してしまったら体調が回復したという患者さんは少なくありません。

 他臓器に転移してしまったがん(転移巣)についても、完全に切除可能な場合には、腎がんと診断されてから転移巣が発見されるまでの期間が長い場合などでは、転移巣を切除することで予後が良くなることが示されています。海外では、あまり転移巣切除は行われないのですが、日本では転移巣を早期に発見し、丁寧に切除する治療方針であるため、海外に比べると日本の転移のある腎がん患者さんの予後はとても良いことが示されています。