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 初発の乳がんが早期で見つかった人も、腫瘍がかなり大きくなってから見つかった人も、早期発見・早期治療の大切さが身に染みているはず。それだけに「これからは定期的に検査を受けて、もしも再発が見つかったら早く治療したい」と思っている人がほとんどではないでしょうか。

 ところが実は、初発の乳がんと再発とでは状況が大きく異なります。初発の腫瘍の取り残しが大きくなってきたような一部の局所再発を除けば、再発を早く見つけて治療しても、症状が出てから治療を開始しても、残された時間が変わるわけではない、というのが現時点における結論です。

 イタリアで行われた二つの大きな比較試験によると、初発の乳がんに対する手術療法を受けた患者に対し、再発の発見を目的に骨シンチグラフィ、肝臓超音波検査、血液検査、胸部X線検査などを定期的に行った場合と、これらを行わない場合とでは、予後に差がないことが確認されました(JAMA;271,1587-92と1593-97,1994)。日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン』でも、初期治療後にこれらの検査を定期的に行うのは推奨グレードC2、「実践することは基本的にすすめられない」としています。

再発“発見”による心理的負担、偽陽性、医療被曝の問題も

岩田広治さん
愛知県がんセンター中央病院
乳腺科部部長
名古屋市立大学医学部卒業。同学部第2外科助手などを経て1998年愛知県がんセンター中央病院乳腺外科医長、2003年から現職。監修本に『乳がん―からだとこころを守る』(日本放送出版協会)。

 再発を早く見つけるデメリットも指摘されています。「再発した」という心理的な負担を抱える期間が長くなる可能性があり、また症状がないのに何らかの治療を行うことになれば、肉体的・経済的な負担を増やすことにもなりかねません。

 本当は再発ではないのに再発と判断される偽陽性も懸念されます。例えば、「骨シンチグラフィで異常が見つかっても、偽陽性が多い」と話すのは、愛知県がんセンター中央病院乳腺科部部長の岩田広治さん。

 また、胸部X線検査や胸腹部CT検査を受ければ、少なからず放射線被曝を受けます。検査による医療被曝に神経質になりすぎる必要はありませんが、『乳癌診療ガイドライン』では、「通常の医療被曝など、低線量の被曝でも、乳がんの発症リスクを増加させる」としています。

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