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 分子標的薬は、がん細胞にある特徴的な物質のみを“狙い撃ち”するように開発された薬です。高い効果が期待できると同時に、正常な細胞への副作用が少ないという特徴があります。

 乳がんの治療に用いられるようになった最初の分子標的薬はトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)です。がん細胞の表面にあり、増殖の指令を受け取る「受容体」となるHER2(ハーツー)たんぱくを標的にします。HER2たんぱくが多量にある「H E R2陽性」の乳がんに効きます。

 HER2陽性か陰性かについては、手術前なら組織診、術後は切り取った組織で調べます。その方法には、HER2たんぱくの量を調べるIHC(免疫組織化学染色)法と、HER2遺伝子の増幅を調べるFISH(フィッシュ)法の2つがあります。

 IHC法は、0、+1、+2、+3で判定して「+3」の場合が陽性です。FISH法では、「HER2遺伝子の過剰発現」を陽性とします。

術前・術後に使えるトラスツズマブ

 トラスツズマブは点滴薬で、再発予防が目的の場合は3週間に1回、1年間投与します。抗がん薬療法を受けてから、あるいは抗がん薬療法と一緒にトラスツズマブで治療するのが基本です。これによって、死亡リスクが3割以上低減することが明らかになっています。2011年からは、術前薬物療法での使用も保険適用になりました。

トラスツズマブは、投与開始時の副作用に注意

 分子標的薬は、抗がん薬ほどではないにしても副作用の心配がないわけではありません。トラスツズマブの場合、薬の投与中、もしくは投与開始後1日以内に、発熱、頭痛、吐き気、せき、めまい、無力症(脱力など)などの症状があります。初めてトラスツズマブの投与を受ける乳がん患者さんの約4割に生じるとされます。

 多くの場合、治療を必要とするほど重症には至らず、2回目以降に症状が見られることは、ほとんどありません。

 もう一つ、トラスツズマブの副作用として注意が必要なのは、心機能障害です。これまでの研究では、10%前後に見られるというデータが出ています。トラスツズマブの投与を受けている間は、心臓への副作用を早期に発見するために、定期的に心機能検査を受けてください。

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