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 乳がんの手術では、わきの下のリンパ節を切除することがあります。これを「リンパ節郭清(かくせい)」といいます。周囲の脂肪組織ごと、わきの下のリンパ節を切除します。

 がん細胞は、リンパ節を通って他の部位に転移します。わきの下(腋窩(えきか))にはリンパ節が複数ありますが、他のリンパ節に比べて乳房に一番近く、転移する場合に最初にがん細胞が到着するところなので、これを調べることで、全身への転移の可能性を推測できます。

 以前のリンパ節郭清は、乳房とわきの下にあるすべてのリンパ節を切除することが一般的でした。しかし、広範囲にリンパ節を切除すると腕にむくみ(リンパ浮腫)が生じやすくなりますし、リンパ節郭清を広範囲で行っても、生存率は変わらないことが研究で明らかとなり、現在は極力狭い範囲にとどめるようになりました。

診断のカギを握る、センチネルリンパ節生検

 リンパ節郭清の縮小化は、「センチネルリンパ節生検」の普及が後押ししています。センチネルとは、「見張り番」という意味。センチネルリンパ節生検は、乳房の原発巣からこぼれ落ちたがん細胞が一番最初にたどり着くセンチネルリンパ節を摘出し、がん細胞を確認します。

 この検査では、手術中に、放射性同位元素(アイソトープ)や特殊な色素をがん組織の近くに注入し、これらに反応した部位を目で確かめて見つけます。近年では、リンパの流れが鮮色にわかる「ICG蛍光法」も行われるようになり、検査の精度が向上しています。

 がん細胞は、センチネルリンパ節を経て他のリンパ節に転移するので、ここにがん細胞がなければ転移はないと判断し、それ以上のリンパ節郭清は省略可能です。つまり、腫瘍とセンチネルリンパ節を切除するだけで済むのです。

リンパ節転移があっても、郭清省略という方針も!?

 センチネルリンパ節にがんの転移巣が発見された場合、現状ではリンパ節郭清を行うのが一般的です。ところが、リンパ節郭清を行っても行わなくても生存率に差はないとする比較試験「ACOSOG Z0011」の結果が発表され(JAMA;305,606-607,2011)、専門家の間でも意見が分かれるようになってきました。

 2011年3月開催の「ザンクトガレン乳がん国際会議」では、世界中から集まった専門医の7割以上が、「0.2 〜2mm径の微小転移であれば郭清しない」という方針を示しています。ただしこれには、(1)乳房温存症例である、(2)術前薬物療法は行っていない、(3)放射線療法を行う、(4)術後薬物療法を行う、という条件があります。

 本誌が2011年末に全国の医療機関を対象に行ったアンケート調査では、「センチネルリンパ節転移がある場合は郭清する」という方針の医療機関がほとんどでした。

(2013年2月8日更新)