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 乳房切除術(全摘、全切除)も、乳房温存術と並ぶ標準治療です。適応は、原則として病期(ステージ)がIII期の乳がんです。これに加えて、次のような場合に選択されます。

・ 腫瘍が大きい(3cm超)
・ 乳がんが乳腺内の広範囲に広がっている
・ 複数の腫瘍が、同じ乳房内の離れた場所にある
・ 乳房温存術後に何らかの理由で放射線治療を受けられない
・ 乳房再建を行うためなど、患者さん本人の希望

胸筋温存乳房切除術は、乳房再建がしやすい

 現在では、乳房切除術といえば「胸筋温存乳房切除術」と呼ばれる手術方法を指します。乳房とわきの下のリンパ節の全部、あるいは一部を切除し、大胸筋(胸の筋肉)は取らずに残します。

 なお、広範囲の非浸潤がん(乳管内がん)には、乳房のみを切除する「全乳房切除術」が行われることもあります。

 20年ほど前までは、大胸筋まで切除する「ハルステッド手術」や、胸骨や鎖骨上のリンパ節も取ってしまう「拡大乳房切除術」もよく行われていました。しかし、切除範囲を小さくしても放射線療法を組み合わせることで生存率に差が出ないことが分かり、胸筋温存乳房切除術が標準治療になりました。

 胸筋温存乳房切除術は、ハルステッド手術や拡大乳房切除術に比べて、わきの下がくぼむなどの胸の変形が少ないのが特徴です。手術後に乳房再建術を組み合わせることで、失われた乳房(乳首も含めて)を人工的に取り戻すことも可能です。

 なお世界では、BRCA1かBRCA2という遺伝子に変異があるために乳がんを発症しやすいことが分かっている遺伝性乳がんリスクの高い女性が、乳がん予防のために乳房を切除するという試みも行われています。

 健康なうちに両方の乳房を取ってしまうのは、肉体的にも心理的にも負担は大きいもの。日本ではまだほとんど行われていませんが、予防のための一つの選択肢であることは、ほぼ間違いないようです。

(2013年2月8日更新)