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山内 英子さん
聖路加国際病院(東京都中央区)
ブレストセンター長/乳腺外科部長
順天堂大学医学部卒業後、聖路加国際病院外科医員、ハーバード大学などでの乳がんの研究、ハワイ大学などでの臨床経験を経て2010年より現職。家族性・遺伝性乳がんの啓発活動に力を入れている。

 乳がん患者の約8割は家族歴に関係なく発症しています。しかし血縁者に乳がん、卵巣がんの患者が複数いる場合、乳がんになりやすい体質を受け継いでいることがあります。これを「家族性」乳がんと呼びます。また、遺伝子の変異が判明している乳がんを、「遺伝性」乳がんといいます。

 「米国の統計では、乳がん患者全体の5〜10%が遺伝性とされています。日本でも近年の研究で、米国と同等の割合で存在するというデータが出ています」と話すのは、聖路加国際病院(東京都中央区)ブレストセンター長の山内英子さん。遺伝性乳がんとされる患者のほとんどが、BRCA1とBRCA2という2種類の遺伝子のどちらかに変異を持つことも分かっています。

 欧米のデータでは遺伝性の場合、50歳までに乳がんを発症するリスクは変異を持たない場合に比べ16〜25倍。「若い年齢で発症しやすい、両側乳房にがんを発症しやすいといった特徴もあります」(山内さん)。

 遺伝性乳がんの可能性が高くなるのは「ハイリスク」チェックリストのいずれかに該当する場合。関係する遺伝子は乳がんだけでなく、卵巣がんの発症にもかかわります。

 科学的に調べる手段としては血液を用いての「遺伝子検査」がありますが、現在保険適用はなく、20万〜30万円程度の費用がかかります。また、自分の遺伝情報を知るという考え方が日本にはまだなじみがなく、遺伝性と分かったときの対策も含め社会的な環境が十分に整っていないのが現状です。「ただ、もしかして自分も……と心配な場合は、遺伝子検査を行う医療機関に相談(遺伝カウンセリング)をしてみると、不安や疑問解消の糸口になるはず」と山内さん。カウンセリング費用は聖路加国際病院の場合、1時間3000円です。

遺伝子変異があるとリスクは跳ね上がる

あなたは「乳がんハイリスク」?

すでに乳がんにかかっている人へ

 もしあなたが乳がんで、乳がんハイリスクチェック項目に該当する場合、遺伝子検査を受ければ、娘や姉妹など身内の乳がん発症リスクを早期に知ることにつなげられるかも。

 「当院の場合、検査をしていなくても、カウンセリングで遺伝性の疑いが高い人に対しては、通常より対象年齢を引き下げての検診を呼びかけています」と山内さん。発症リスクが高いと知っていれば、強い自覚を持って早期発見のための検診を受けることができるわけです。また、「自費になりますが、治療に使うホルモン療法薬を予防的に服用するなど、発症リスクを抑える策もあります」(山内さん)。

 遺伝子検査は気軽に受けられる検査とは言えませんが、身内の将来のために何か対策を打ちたいと考える人にとっては一つの手段かも。遺伝性乳がんや遺伝子検査の相談先は、HBOCのウェブサイトで得られます。

(2013年2月8日更新)