乳がん百科TOPページ

 日本人では、妊娠が可能な30代40代で乳がんにかかってしまう女性が多く存在します。「これから出産を」と考えている時期に乳がんの発症を知る女性は少なくないのです。

 しかし乳がんの治療が無事終了し、月経があれば、妊娠・出産が可能です。乳がんの手術や放射線療法に妊娠・出産への影響はないので、治療を受けたことで将来の胎児に悪影響が残るということもありません。

 ただし、抗がん薬療法には「早発閉経」を引き起こす副作用(卵巣毒性)があります。「月経があれば」という条件が付くのはそのためです。

 早発閉経というのは、一般に、平均の閉経年齢(50歳前後)よりかなり早く、40代前半かそれ以前に月経が来なくなり“閉経”してしまうこと。抗がん薬療法の開始とともにほとんどの人は無月経となります。しかし、その多くは一時的な無月経であり、治療終了後に月経は戻ります。ちなみに、抗がん薬療法によって40歳未満で無月経になるのは平均40%とされているのに対し、40歳以上では76%の人が無月経になるという報告があります。

 ただし、年齢が上がると、再度月経が回復する割合が減ってしまいます。40代未満と比較すると、40代以上の回復率は低値で、そのまま早発閉経になってしまう可能性が高いのです。

 閉経してしまうと自然妊娠できなくなるため、治療後に妊娠・出産を望む場合は、どのような選択肢があるのか、治療を始める前に主治医とよく相談しておく必要があります。必要に応じて、不妊治療医との相談も、事前にしておいたほうがいいでしょう。

 近年、早発閉経を予防する手法の一つとして、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LH ―RH)アゴニスト製剤を、抗がん薬投与前から用いることが検討されていますが、日本乳癌学会は『乳癌診療ガイドライン』で、まだ科学的根拠が不十分だとして、慎重な姿勢を示しています。

妊娠前には再発の有無の確認を

 一方、月経が回復し、薬剤の投与終了から一定の期間がたっていれば、いつでも妊娠は可能です。とはいえ、薬剤による卵子への影響を考えると、抗がん薬療法終了後、数回の月経を確認した後に妊娠するほうがよいと推奨されています。また、ホルモン薬は、胎児に奇形が出る危険性があるため、服用終了後2カ月は妊娠を避けるほうがいいとされます。

 加えて、再発のリスクを考慮して「再発リスクが高い術後2年間は、妊娠を避けるのが無難」という意見も。

 一方、乳がんの治療終了後の妊娠・出産が、再発のリスクを高めるという報告はありません。ただし、ひとたび妊娠すると検査が行いにくくなり、早期発見が難しくなります。そのため、出産を希望するときは、妊娠前に再発の有無について十分な検査を行い、再発していないことを確認しておくことが重要です。

(2013年2月8日更新)