――いろんな偶然や幸運が重なって救命、社会復帰につながったんですね。ちなみにICUで意識不明の間は臨死体験もされたそうですが、どんな感じだったんでしょうか? お花畑っていうのがだいたい共通していると聞いたりしますが……。

 臨死体験ね。意外とリアルなんだよな、あれ。そう、それでお花畑なの。あれは何なのかな、最終的にお花畑に行くんだよ。僕は疲れたなーって思いながら、目の前にあるお花畑に踏み込もうとしているの。お花畑に踏み込むと、すごく幸せな気持ちになったのは覚えてるんですよね。

写真撮影:飯塚 寛之

 でもそこで、誰か分からないけど後ろから呼ぶ声がするんだよ。多分お袋なんだけど。それで振り返ると、お花畑から一転して雪山なの。雪山でロケしていることになっていて、僕は「何でプロレスラーなのにこんな雪山でロケなんかしなきゃいけないんだ」とか思いながら歩いてるの。で、熊が出るらしいという話だったのでロケ隊の先頭を僕が歩いてると、本当に熊が出てきて、戦って……ってところで目が覚めたんだな。

 そのときは扁桃炎だとかそういうのはもうキレイに忘れてて、完全に「熊に殴られてケガしたから入院した」って思い込んでた。その思い込みが1週間くらい続いて、マネージャーとか医師にも、ずっと熊に殴られたって言ってたみたい。みんな「はいはい」って感じで聞き流していたけど(笑)、そのくらい、臨場感があったなぁ。実際、頭にコブもあったし。あれは、前日無意識に暴れたときにぶつけてできたんだろうけどね。

体験した人間にしか分からない、「喉越し」の幸せ

――1週間後には、扁桃炎で入院したことを思い出されたんですね。

 周りに繰り返し説明されてね、そうだったなと。ICUには2週間くらいいて、その後一般病棟に移って、合計で1カ月半くらい入院しました。気管切開の穴もあったし、しばらくは流動食をチューブで胃に入れている状態が続いていました。それで、そろそろ口から食べ物を食べてもいいですよということで、鰻を注文しました。

 鰻を口から食べたときは、うわー、うまいなぁって思いましたよ。「喉越し」っていう言葉があるけど、喉を通すということがこんなに幸せなものなのか、というのはあのとき本当に実感しましたね。

――口から食べ物を食べて、喉を通すことの幸せというのを感じられたんですね。

 そう。やっぱり人間、胃に食べ物を直接入れたって幸せは感じられないんですよ。舌と喉でいろんなものを感じてるんです。これは、やっぱり体験した人間にしか分からない。たとえ水1杯でも、喉を通すことによって「ああ、水ってこういう味なんだな」って初めて知ったもん。

――食事のありがたみを感じられて、今は身体に良い食べ物を取るようにしているんですか?

 いや、食事は全く節制してない(笑)。マクドナルド好きだし。揚げたてのチキンナゲットはうまいよね。

 まあとにかく、身体に良いことを心掛けるなら、ストレスを貯めないようにするのが一番かな。ストレス自体が悪さをするんじゃなくて、ストレスが貯まると免疫力が低下するんだよ。人間関係でよく悩む人がいるけど、そんなのも僕からしたら付き合わなきゃいいだけじゃん、って思うね。無理をすれば、やっぱり身体に負担が掛かるから。

 最近は、試合前に眠眠打破を飲んでるね。でも、強強打破は強すぎて飲むと逆に具合が悪くなるんだよ(笑)。適度なカフェインが僕にはいいみたい。取り過ぎると、そのときは元気になるけど、後でどーんと落ちるしな。

 あとは夢を持つことかな。最近は、試合の後に子どもたちをリングに上げて、夢を聞くんですよ。僕のファン層は、30歳代後半から50歳代が中心なんだけど、そのファンが今は子どもを連れて試合に来る。その子どもを、リングに上げてばんばん水を掛けたり夢を宣言させたりするんですよ。1000人の観客を前に大きな声を出すと、それが自信につながって、その子の人生が変わったりする。

 でも、まずは大人が夢を見ないと子どもも夢を持てないですよ。夢を持つことが生命力につながる。僕は10月31日に7度目の引退をするけれど、これからも夢は持って生きたいね。