みなさん、こんにちは。Cadetto.jp管理人の増谷です。今回は、病院や診療科の垣根を越えて、100人超の若手医師と医学生が集まったイベント、United Medical Leaders (UML) summit 2017 #2(8月19日開催)の模様をお伝えします。テーマは「人工知能」と「医師同士婚」の2本立て。どんな話題が飛び出したのでしょうか。

 冒頭は、救急医の沖山翔氏が、日経メディカルでも特集が組まれた人工知能(AI)の医療応用の可能性について講演しました。「そもそも『知能』の定義が不可能なので、『人工知能』も定義できない。AIが意味するものは、言う人によって異なっている可能性がある」と言う沖山氏は、AIと医療の歴史を紐解くところから始まりました。

 AIと医療の最初の接点といえるのは、1966年に誕生したカウンセリング式の対話型プログラム「ELIZA」でした。ELIZAに話を聞いてもらって泣き出す被験者もいたそうです。 1975年には感染症の治療方針を提示する「MYCIN」というプログラムが登場。「今から40年以上前に登場したMYCINですが、一般の内科医を上回る正確性を持っていました」(沖山氏)。このように、AIの医療応用には長い歴史があるのです。

機械学習の本質は、データとラベルを結ぶ法則を見出すこと
 最近「AI」と言われるものの中には、膨大なデータを基に、ある現象と指標との関係をコンピューターに見出させる機械学習や、「AならばB」といったルールベースド、自動翻訳といった自然言語処理など、複数の種類があります。中でも2013年頃から盛んになってきたのが、機械学習の一部であるディープラーニングです。ディープラーニングは「深層学習」とも呼ばれ、AならばBという単純な関係から、AかBならばCといった多層化した判断基準をAI自らが作り出すというもの。例として、グーグル傘下の英ディープマインド社が開発し、世界最強棋士との三番勝負で完勝した囲碁AIの「アルファ碁」や画像認識などが挙げられます。

 ここで、沖山氏はAIの機械学習に関する象徴的な事例を紹介しました。2013年に、ロバート・ガルブレイスという新人作家が『The Cuckoo's calling』という小説を出版しました。しかし、新人作家としては不自然なほどの完成度の高さから、「著名作家が別名で出版した小説なのではないか」という疑惑が浮上します。そこで、著名作家らの著作をインプットしたAIに、The Cuckoo's callingを書いたのは誰かを検証させてみることに。その結果、AIが出した答えは、『ハリーポッターシリーズ』の作者として名高いJ・K・ローリング。本人も認めて正体が明らかになったのです。「このように著作をインプットする学習と、誰が書いたのかという推論がセットになったパターン処理が機械学習の本質です」と沖山氏は説明しました。

 パターン処理とは、データにラベルを付ける法則のようなもの。まず学習の段階で、文章(データ)と著者名(ラベル)がセットになった大量の情報から、「この文体は漱石」「この文体は太宰」などのパターンを見出します。そして推論の段階になると、AIは入力された文章をパターンに当てはめ、筆者名を回答します。

 つまりパターンとは、データとラベルを結びつける法則のこと。データと法則は「データ×法則=ラベル」といった3項目から成る関係になっているので、3項目中2項目が分かれば残りが求められます。データとラベルのペアが豊富にあればあるほど、それをつなぐ法則が浮かび上がりやすくなるのです。

 ただし、ここまでは「AIと呼ぶのもはばかられるほどのシンプルな機械学習の話。これを一度に複数のデータや法則で多層化し、複雑にしたのがディープラーニングです。項目ごとの重み付けも学習するため、精度が飛躍的に向上しました」(沖山氏)。例えば、「我輩」という単語が出てきた場合には「夏目漱石らしさ」が高いが、もう少し普遍的な単語である「猫」ならば「夏目漱石らしさ」が高いというわけでもない……といった影響力を学習していくのがディープラーニングだと解説しました。