こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。みなさん、下記のポスターを目にしたことはあるでしょうか。

美少女戦士セーラームーンとコラボレーションしたポスター。表面には「検査しないとおしおきよ!!」というキャッチコピー(左)。裏面には、梅毒をはじめとする性感染症の症状が書かれている。

 これは、性感染症の予防や早期発見・治療の必要性を啓発すべく、厚生労働省が企画したもので、美少女戦士セーラームーンとコラボレーションしたポスターやリーフレット、さらにはハート型のコンドームパッケージを作成しています。11月21日の発表直後から、「厚労省のキャンペーンに選ばれるなんて、セーラームーンはやっぱりすごい」「(キャッチコピーの『検査しないとおしおきよ!!』を受けて)検査をしないとどんなおしおきがあるというのか」「セーラームーンが汚れてしまう」など、賛否両論が巻き起こりました。そこで、今回の性感染症の予防啓発を企画した健康局結核感染症課に、狙いを聞いてきました。

お話を伺った、結核感染症課長の浅沼一成氏。

 性感染症のうち、特に近年、男女ともに感染者の報告数が増えているのが、梅毒です。2010年には621例(うち女性124例)だった報告数が、2015年には2697例(うち女性763例)と約4倍に増加。「2016年もこの増加傾向は止まらず、このままいけば女性の感染報告数だけでも1000例を超える」と浅沼氏は危機感を強めていました(関連記事:梅毒が33週で2674人に、昨年実績を超える)。

 性感染症は男女ともに啓発すべきものではあり、結核感染症課はかねてから男性向けや全体向けの啓発を実施してきました。「最終的には自分の健康の事なので、自分のことは自分で調べる意識を持ってもらわなければいけない状況になっている」と考えた浅沼氏らは、昨年度、女性向けの予防啓発も行っています。しかし、それでも止まらない性感染症の増加に、浅沼氏は「どうしたものかと頭を悩ませていた」と言います。

昨年度の女性向け梅毒啓発ポスター。目にしたことはあるけれど、話題になった記憶はないような…。

 そこで今回のコラボ啓発が企画されました。ちなみにこの企画、特に女性向けというわけではないそうです。セーラームーンを起用した理由の1つは、女性の梅毒感染報告数が多い年代層である20歳代、30歳代が子どもだった頃に流行っていたキャラクターで、親和性が高いこと。この理由だけが一人歩きし、インターネット上で「男性が感染源になっている可能性もあるのだから、女性だけでなく男性にも啓発を行うべきだ」といった批判が散見されました。

 一方で、セーラームーン起用の背景には、女性ばかりではなく、男性やLGBTなど多様な層に人気のあるキャラクターであるということもありました。「漫画好きな方は別でしょうが、様々な方にまんべんなく支持されているキャラクターは珍しい」と言う浅沼氏。多くの人の目を引き、性感染症について考えるきっかけになれば…という意図があったと説明します。

 起用後、「セーラームーンが汚れる」といった声があったことについて浅沼氏は、「こうした声は、性感染症に対するイメージからきているのではないかと思う。我々は、どんな病気でも差別・偏見なく治療できるものは治療し、治療できないものは寄り添っていきたいと考え、啓発も行ってきたつもり。しかし、日本の性感染症に対するスティグマはまだまだ根深いものがあると感じた」と語ります。

 セーラームーンの原作者である武内直子氏は、薬剤師でもあり、普段から健康問題に関心を持っていたそう。今回の企画に賛同し、「いろいろな感染症が取り上げられるなかで、その対策は日頃から重要な問題であると考えており、今回このような機会を通じて、皆様のお役に立てることをうれしく思います」と語っています。さらに、「セーラームーンが今までのイメージを払拭し、セーラームーンの声がファンや皆様に理解され、検査に結びつくことで、多くの方がより健康に過ごせることを願っております」と話していることを思えば、セーラームーンファンは今回の起用を応援すべきといえるでしょう。

セーラームーンや性感染症の情報が印刷された、ハート型のコンドームパッケージ。性の健康医学財団が約6万個を作成しており、自治体などに配布したり、啓発イベントなどの機会に配布するという。

 また、浅沼氏らが特に心配したのが、キャッチコピーの「検査しないとおしおきよ!!」だったとか。「『おしおき』という言葉がいろいろ深読みされているようだが、これはセーラームーンの主人公の決めセリフ『月にかわっておしおきよ!』を由来とする言葉であり、それ自体に深い意図はない」(浅沼氏)。もともと厚労省側は「STI(性感染症)・HIVは早期発見・治療が大切です」というキャッチコピーを検討していたといいますが、原作者の武内氏の意見も踏まえ、現在のキャッチコピーが決まったそうです。武内氏が「性感染症の問題は非常にデリケートな問題であり、『検査しないとおしおきよ!!』の文言を提案した際の、厚生労働省担当者の『いいんですか!?』の驚きようは、まさにそれを表しておりました」と語っています。

 浅沼氏も、「心配はあったが、キャッチーでみんな知っているセリフ。話題にならなければ意味がないということで決断した」と言い、「こうした大胆な手段に打って出るほど、性感染症の増加は危機的な状況であるということを知ってほしい」と理解を求めます。

 ちなみに、「セーラームーンは中学生なのに、性感染症とはいかがなものか」という声もありました。実は、15〜19歳の女性の梅毒報告数は男性の約3倍で、10〜14歳で報告された例もあります。さらに、学校保健でもHIV教育は行われているはずであり、中学生だからといってタブー視する話題とは言えません。「そうしたことを鑑みれば、セーラームーンが中学生だったとしても、検査の必要性を訴えるのは不適切とは言えない」と浅沼氏は強調します。

 発表直後から賛否両論が巻き起こった今回の企画ですが、浅沼氏は「性感染症の話題でこんなに盛り上がったのは久々ではないか。性感染症対策にとっての一番の敵は、無関心だ。意見は様々あるだろうが、ぜひとも関心を持ってほしい」と手応えを感じています。

「Cadetto.jp」の新着記事は、Cadetto.jpのFacebookページTwitterでも紹介しています。Facebook、Twitterから最新記事をチェックしてください。また、Cadetto.jpへの感想やご意見などは、管理人増谷ができる限りお答えしますので、ぜひFacebookページにお寄せください。