みなさんこんにちは、Cadetto.jpの増谷です。みなさんは、外国語を話す患者さんの診療に当たったことはありますか? 以前、日経メディカルOnlineでCadetto世代(卒後10年未満)の医師会員にWebアンケートを行ったところ、現在英会話の勉強をしていると回答したのは245人中98人(40%)にとどまっていました(関連記事)。さらに英語以外の言語ともなればお手上げという人は少なくないのではないでしょうか。

 今回は、医療領域のシンクタンクである一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH[東京都港区]、代表理事は東大国際保健政策学教授の渋谷健司氏)の、医療における言語の課題解消への取り組み「mediPhoneメディフォン)」をご紹介します。

ヒンディー語を話す患者の診療に苦慮する医師の声がきっかけ
 mediPhoneは、外国語を話す患者の診療時に、医師が登録している電話番号から電話を掛けると希望する言語の医療通訳者につながる、遠隔医療通訳サービスです。サービスに加入していれば、利用前の事前予約などは不要。電話なので、8時30分〜24時の営業時間中であれば、どこからでも利用できます。受話器を受け渡したり、ハンズフリー通話で利用します。

 現在対応している言語は英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ヒンディー語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語の8言語。ジェイ・アイ・ジー・エイチ理事CEO兼mediPhone Founderの澤田真弓氏によれば、「2014年は英語の問い合わせが多かったが、2015年はヒンディー語や中国語といったアジア圏の言語の問い合わせが増えている」とのこと。2016年7月にはさらに2言語(タイ語、フランス語)を追加し、10言語とする予定です。初期登録料(3万円)が必要で、それ以降は通話時間に応じた利用料金プランを選択(表1)。現在、80以上の医療機関が利用しています。

表1 mediPhoneの利用料金プラン

 澤田氏は、「mediPhoneのビジョンは、すべての人々に公正な医療を届けるというもの。まずは言語の障壁を取り除くことをミッションに活動している。言語障壁の高い日本だからこそ、解消する意義も大きいと考えている」と話します。

 言語の課題から取り組み始めたのは、ヒンディー語を話す患者の診療に苦慮する医師の話を聞いたことがきっかけ。その後に会った医療通訳者は、全診療科の内容を理解しなければならないのでとても勉強熱心で、専門性も高かったそうです。出身国では医師や看護師の資格を持っているような医療のバッググラウンドを持つ人たちなのですが、「ボランティアで携わっているような状況だった」と澤田氏は語ります。こうした医療通訳者たちが、医療通訳だけで一本立ちできるような収入は得られていないと知り、プロとして持続的な雇用の場をつくる必要があると考え、mediPhoneを立ち上げることになりました。

ジェイ・アイ・ジー・エイチ理事CEO兼mediPhone Founderの澤田真弓氏

 現在、登録している医療通訳者は189人。「遠隔での医療通訳にこだわるのは、質の高い医療通訳者は数が限られているため、より効率的に運用するため」と澤田氏は言います。遠隔通訳は対面での通訳とは別のスキルが必要になることもあり、医学知識や言語力のみならず倫理面やマナーまでを含めた医療通訳養成セミナーを用意。セミナーを受講した医療通訳者だけを登録しています。

 こうした経緯で2014年1月から医療機関向けに提供してきたmediPhoneですが、2015年10月に、対象を診療シーンや医療機関以外にも広げるべく事業戦略を切り替え。新たに、診断書や診療明細、問診表、病院紹介パンフレットなどの医療翻訳も受注する。外国人患者の予約受付代行、外国人患者が来院した際の対応方法の相談や医療通訳などを気軽に依頼できる外国人医療ホットライン、医療従事者に対する医療英語・中国語研修などのサービスを開始し、「外国人医療を取り巻くあらゆる課題に対応していく」と言います。

病院受付でのアドバイス、訪日外国人向け保険サービスも展開
 外国人患者が来院した際に医療通訳が対応するシステムは、聖路加国際病院(東京都中央区)、テレビ会議システムを有するシスコシステムズ社(東京都港区)と共同で進めています。4月に、聖路加国際病院の総合受付に同システムを設置し、1カ月ほど実証試験を行っていました。澤田氏は、「例えば英国人は、医療機関といえばまずは一般医(General Practitioner:GP)にかかるという考え方を持っていたりして、自分で診療科を選んで受診する日本のスタイルに困惑する場合がある。そうした場合に、まずは総合受付で医療通訳が対応して主訴を聴取し、かかるべき診療科を提示するといったニーズがある」と説明します。

 医療機関以外との協業では、損害保険会社があります。5月19日、東京海上日動火災保険の訪日外国人(インバウンド)向け保険サービスに、mediPhoneの医療通訳の提供を開始すると発表。保険に入っている外国人が医療機関を受診した際、その医療機関がmediPhoneに加入していなくても、診療時にmediPhoneを利用できることになります。

 「医療は社会のインフラだと実感している」という澤田氏は、「今後もmediPhoneで医療界における言語障壁をフラットにすべく、様々な取り組みを打ち出していきたい」と語りました。

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