ただ、このような評価を見ると、「神の手」のようなスペシャリストがもてはやされるように、少数の“名医”に人気が集中するといったことも考えられます。杉田氏は、「我々も、本来必要ではない人までもがスペシャリストに集中することは避けたいと思っています。そのため、誰もが“名医”を受診する必要はないことや、かかりつけ医の意義についてのコラムを執筆し、啓発にも努めています」と説明します。

 有料サービスにおける提案では、手術までの待機期間など「受診しやすさ」も合わせて検討しています。例えば、その分野で「神の手」と言われるような名医であっても、診療を受けられるまでに半年は待たなければならない、という場合。白内障なら検討の余地があるかもしれませんが、癌であればそんなに待てません。その場合は、その患者の治療が十分に行えそうで、より受診しやすい医師を提案することになるといいます。ただし、待機期間などは公開情報ではないため、あくまで患者や医療機関関係者へのヒアリングなどにより収集しているそうです。

クリニック検索には口コミも活用
 今後力を入れていくのは、大きく分けて2つ。クリンタル独自の基準以上のクリニックを検索する仕組みの開発と、健康保険組合や保険会社向けのサービスといいます。今回調達した資金は、主にクリニック検索システムを開発するエンジニアの増員と、健保組合などにサービスを提案するビジネスディベロップメント担当の増員に充てるそうです。

クリニック検索のデモ画面(画像をクリックして拡大)

 現時点でクリンタルは、前述の通り確定診断されている患者向けに、疾患や治療法ごとに“名医”を紹介するサービスになっています。例えば、消化器外科なら「食道癌手術」「大腸癌腹腔鏡手術」「肝臓癌手術」など、眼科なら「緑内障」「ぶどう膜炎」「白内障」などといった具合です。つまり対象は、主に病院で扱う、手術が必要となるような比較的重度の疾患。このような重度な疾患だけでは、クリンタルを利用する機会はそう多くありません。杉田氏は、「確定診断前でも、きちんとその症状を診られるクリニックを探せるようになることで、普段からクリンタルを利用するようになってほしい」と説明します。

 また、クリニックの場合は医療の質だけでなくサービス面もより重視されるという考えの杉田氏。そのため、「専門医資格や患者数などで絞った上で、待ち時間やコメディカルの接遇といった、利用者からの口コミも集めます。利用者が症状と場所を入力すれば、その患者の好みに合わせながら、サービスと質のバランスをうまく取った提案ができるようにしていきたいと思っています」(杉田氏)。クリニックを検索するサービスは現在開発中で、口コミは夏ごろから集め始める予定とのことです。

口コミ入力のデモ画面(画像をクリックして拡大)

 後者は、健康保険組合や生命保険商品の付帯サービスとして、受診先提案サービスの導入を推進していくこと。米国に、クリンタルのモデルとなったGRAND ROUNDSという医師紹介サービスがあります。「GRAND ROUNDSの報告の1つに、1万人規模の企業が同サービスを導入し、従業員が適切な受診先に掛かるようになった結果、入院日数や合併症率、再入院率が低下し、年間1億円ほどの医療費が削減できたというものがあります。日本の医療費で換算しても、年間4000万円程度の削減が可能なのではないかと考えています」と話す杉田氏。今後、日本におけるコスト削減のシミュレーションを行い、パイロットスタディを実施していきたいそうです。現在、フルタイムの社員は3人、パートタイマーを合わせると8人ほど。医学部生や、エンジニアのインターンを募集しているとのことです。

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