こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。春らしい日が続く近頃、管理人にとっては気持ちの良い毎日が続いていますが、花粉症の方はつらい時期かと思います。ところで、医療職のみなさんは、ご家族や友人に「この病気にかかったんだけど、どの病院がオススメ?」と尋ねられて答えに詰まった経験はないでしょうか。今回は、そんな疑問に答えるべく、医師である杉田玲夢氏が立ち上げた“名医を検索する”ウェブサービス「クリンタル」をご紹介します。

 クリンタルがサービスの対象とするのは、確定診断がされた患者さん。疾患や治療法ごとに、その分野に秀でていると医師が判断した医師が掲載されています。現在、取り扱っている疾患数は130ほど。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の約1200人の医師が掲載されています。1年以内にエリアは全国に、掲載する医師も4000〜5000人程度まで拡充予定とのこと。医師の検索は無料ですが、1回6000円の受診先提案サービス(2015年末に開始し、実績は非公開)では、症状や治療に関する希望などを入力してもらった上で、相性の良い医師を詳細な説明とともに紹介します。

 クリンタルを運営するクリンタル社(東京都港区)は、3月23日に伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(東京都港区)とDraper Nexus Venture Partners(東京千代田区)、個人投資家からの資金調達を発表。立ち上げのきっかけから、今後どのような点に力を入れていくのかということまでを社長の杉田氏に聞きました。

すぎたれいむ氏○2006年東京大学卒。東京大学医学部附属病院眼科をへて、経営コンサルタント業に就く。米国デューク大学ビジネススクールでMBAを取得後はボストンコンサルティンググループで主に病院経営のコンサルティングに携わる。2015年5月にクリンタル社を起業。

クリンタルの“名医”の定義とは?
 “名医”検索サービスと言われてまず気になるのが、その定義です。クリンタルでは、最初に専門医資格などから候補を抽出。次に、臨床視点での評判を、その診療科の複数の専門医に聞きます。最後に、その医師の手術数や論文数など、20項目ほどの客観的データからさらに絞り込み、最終的な評価としています。「現在のエリアである首都圏では、1疾患当たり10人いれば、1時間で移動できる圏内に1人は“名医”がいることになると思うので、既に十分足りている」と考えている杉田氏。ただし、早期介入が重要になる「心臓カテーテル」の“名医”などは数を増やして密度を高めたり、患者数の多い疾患は少し多めに集めたりして、疾患の特性に合わせて選出する人数は調整しているとのこと。

 杉田氏は、「客観的データに何を使っているかは言えませんが、各診療科の医師に相談して、その診療科特有の事情にも配慮できるように設定しています」と言います。医師の情報を集めて掲載を検討するプロセスには、2〜3カ月ほど掛けています。評価に協力する医師は、各診療科で2〜3人程度確保しているとのこと。「50人以上の医師に協力してもらっています。エリア拡大に伴い、つてをたどって協力医師も全国に拡充中で、さらに増やして行く予定です」(杉田氏)。

 クリンタルが目指すのは、指標と利用者の口コミを参考にする、いわば「食べログ」スタイルではなく、「ここに掲載されている医師は全て“名医”」と太鼓判を押す「ミシュランガイド」スタイルのサービスです。

 さらに、1回6000円の受診先紹介サービスであれば、その患者の病状や性格との相性まで加味して提案することができるそう。各医師には、「紹介時には前医が医療機関からFAXする必要がある」「宛名が必須」といった、前医からの紹介状についての細かいルールまで確認しているといいます。

口コミでは判断できない医師の善し悪し
 杉田氏がクリンタルを立ち上げた最大の理由は、どの医療機関にかかるべきかを知人から問い合わせされることが多く、自分が病気になった場合を考えても、「どこに行けばいいのか分からない」と思ったこと。不動産や飲食店には分かりやすい口コミサイトがあるのに、医師を探すときに参考にできるサービスがないのはどうなのかという思いを抱くようになりました。

 ただし、医師や医療機関は不動産や飲食店と同じ方法では選べません。情報の非対称性があり、患者の口コミなどで単純に判断することはできないからです。「私は臨床から離れて7年ほどたっていますが、それでも知人たちが私にお勧めの医療機関を尋ねるのは、医師である私なら良い医療機関を知っているだろうと見込んでいるからです」(杉田氏)。非医療者は、医師目線の評価に重きを置いている、と感じた杉田氏は、独自基準に基づいて評価した“名店”を掲載するミシュランガイド形式のサービスにしたといいます。

 もう1つの理由は、「医療の見える化」を進めたいという思いでした。杉田氏は、前職で病院の経営コンサルティングに携わっていた頃から、特に都市部で、同じような機能を持った医療機関がひしめきあっていることに問題意識を持っていました。しかし、「選択と集中」を医療機関側に推進させるのは容易ではありません。

 そこで、「この病院の産婦人科は良いらしい」などの評価が広まって患者が集中するようになれば、医療機関側もその診療科に集中せざるを得なくなるのではないかと思いました。「腕の良い医師は、自分が治療すべき患者がいるところに行きたいと思うもの。そうなれば、患者も増え、設備投資がされ、良い医師も集まってくる。つまり、患者サイドから『選択と集中』を促進できると考えました」(杉田氏)。