こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。外来の患者さんの収縮期血圧が150mmHgだったら、みなさんはどのように対処されますか? ガイドライン上は、140/90mmHg以上を高血圧とするのはご存じの通り。日本高血圧学会が2014年に発行した「高血圧治療ガイドライン2014JSH2014)」では、若年、中年、前期高齢者であれば診察室血圧で140/90mmHg、後期高齢者でも150/90mmHgが降圧目標としています(関連記事)。しかし、聖路加国際病院循環器内科の水野篤氏は、「医師は数値のみで降圧薬を処方するわけではない。なんといっても生活習慣の改善が基本」と言います。

聖路加国際病院循環器内科の水野篤氏。

 収縮期血圧150mmHg程度であれば、減塩や肥満是正、運動といった生活習慣の修正だけで正常血圧を達成できる可能性がありますが、これが難しいのが現実。例えば減塩1つを取っても、2012年に発表されたWHOのガイドラインでは1日当たりの食塩摂取量として5g/日未満を強く推奨していますが、日本における平均食塩摂取量は10g/日を超えています。JSH2014では、日本の実情を考慮して6g/日未満を目標値としていますが、それでも食塩摂取量を目標値内に抑えることは簡単ではありません(関連記事)。肥満是正や運動も同様です。水野氏は、「高血圧自体は痛くも痒くもない。だから生活習慣の修正もされにくい」と指摘します。

 そのため、収縮期血圧150mmHgの患者を実臨床で目の前にしたとき、水野氏は「投薬などは患者背景(リスク)で決める」と言います。この患者背景には、年齢や併存疾患だけでなく、生活習慣の修正ができそうかということまで含まれます。「久山町研究やフラミンガム研究などを挙げるまでもなく、高血圧は死亡につながることが分かっている。高血圧は死ぬ疾患だということを自分事に捉えて、高血圧に関わる種々の問題を改善する革新的な方法を開発していただきたい」(水野氏)。

白衣高血圧と仮面高血圧を解き明かした家庭血圧計
 水野氏がこう訴えていたのは、ドコモ・ヘルスケア(東京都渋谷区)の協賛で開催されたヘルスケアハッカソンの会場でした。テーマはずばり、日本に約4300万人の患者がいると推計されている「高血圧」。ヘルスケアハッカソンは、2014年に第1回を開催し、今回で12回目となるアイデア創出イベントです。

 もう1人の話題提供者であるオムロンヘルスケア(東京都港区)グローバル営業統轄本部の白崎修氏は、若年患者の未治療率の高さを啓発。続いて、家庭用の血圧計を開発した頃のエピソードなどを紹介しました。「顧客からは、『何度測定しても病院で測定した値よりも低い値が出る。欠陥品だ!』と苦情をいただき、医師会からは『血圧は医療機関で計るもの。今すぐ家庭血圧計の販売を中止せよ』とお叱りをいただきました」(白崎氏)。

 この疑問が臨床研究の発端にもなり、診察室血圧は高血圧なのに、家庭血圧と24時間血圧は正常域にある「白衣高血圧」と、診察室血圧は正常なのに、家庭血圧と24時間血圧が高い「仮面高血圧」の発見につながったといいます。今では、「診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」と、JSH2014で高血圧診療において家庭血圧を今まで以上に重視する方針が示されるまでになっています(関連記事)。

 こうした情報提供を受け、医療関係者、エンジニア、学生や会社員などの参加者がチームを組み、高血圧を改善する策を、翌日の夕方に行われるプレゼンテーションまで、じっくり検討。最優秀賞と優秀賞を掛けてアイデアを出し合いました。