横林  ありがたいことに、反対どころではなく、全面的にサポートしていただいています。留学したいと思っていることに関しては、広島に帰ってきてから早い段階で教授に相談させてもらっており、それ以来、教授は応援してくださっています。医局の上司や同僚も快く送り出してくれ、不在の間の仕事をカバーしてくれています。大学に籍を置いた状態で留学できるようにも配慮していただきました。理解ある素敵な医局の方々に恵まれたのも留学実現の大きな要因だと思います。

岩本  そんなに理解のある医局なんて、そうそうないですよ!

横林  確かに、それはそうかもしれませんね。でもそれは船医の岩本先生だってそうじゃないですか!

岩本  あっ…、確かに。我々の医局は多様性に富んでますからね。

横林  本日の会を通して、海外や留学といっても色々なやり方があるのが皆さんに伝わればと思っています。岩本先生のような船医もオススメの海外経験だと思います。いやほんと、うらやましい。岩本先生は、渡航医学の認定試験「Certificate in Travel Health」も取得していましたね。

岩本  はい。ベトナムで「Certificate in Travel Health」を取得しました。

横林  こうした渡航医学の認定試験が、海外で診療をしたいという日本人のためのサポートをしてくれることもあります。海外とか留学といっても、色々な幅があります。

医学生  船医って、どんな生活なのでしょう?

岩本  客船で勤務するので、患者はお客さんとクルー(外国人)です。合わせて約4000人が乗る客船で数日ごとに停泊します。私が乗っていた時期は、地面を踏まない日は長くて丸4日間くらい、航海日が長いクルーズだと1週間以上ということもあります。私は去年と今年、2〜3カ月ほど船医をさせてもらっています。あ、船医になると船内や寄港地で美味しい物が食べられますよ!

横林  船医は診療に使える検査機器が限られている中で診療することになるんだよね。クルーは外国人で共通語は英語。あと、まさかの紙カルテなんだっけ?

岩本  そう。紙カルテです。私が乗っているときのシニアドクターは南アフリカ出身の先生でした。紙カルテだと、達筆な字は読めなくて困りました(笑)。これは日本と同じですね。

横林  楽しそうでしょ! 学生からすると「大変そう…」って思うかもしれないけれど。

岩本  乗船する医師は自分を含めて2人だけです。あとの医療スタッフはナースです。様々な国の人が集まっている感じ。米国の会社だけれど、医療はイギリス寄りです。

 数カ月、外国の医療環境で診療をしてみたいという人には選択肢の一つになるかもしれないですね。

医学生  ここまで色々お話いただいて、留学には興味はあるのですが…。正直、僕には何を目的にすればよいかが分からないという気持ちがあります。

横林  年齢を重ねるほど、色々なことを色眼鏡でつい見てしまうようになります。何も知らないで海外に行くと、いいな、楽しいなと思えたことが、40歳とか50歳になってから行くと、自分が経験したことや見たものに近いなと思ってしまって、興味を持ちづらくなることもあるでしょう。

 目的意識は確かに大事だけれど、特に明確に決めなくても構わないと思います。等身大の自分で感じられたからこその経験を将来、社会に還元するために持って帰りたいという意気込みが重要。等身大で面白い、楽しいと思える時期に行った方が良いと思うので、できれば早いうちに行った方がよいと思います。

 平たく言えば、何かを得ようとするのではなく、興味の赴くまま行ってみるという感じ。そうすれば、自然と日本や世界の良さも分かるし、いかに恵まれているかも分かる。そこで学んだことから、自分が社会や世界に何を還元できるかと考えられるきっかけになるはず。表向きの高尚な理由は後から付ければ良いんですよ。

医学生 行くことが目的になりつつあるんですが、それでもいいんでしょうか。

横林  みんな、高尚な理由は後付けですよ。「なんとなく」というのは「直感でそう思っている」「自分の本能でそうしたい」ということです。最初に掲げる目的はなんとなくでいいと思います。こうしたいと思ったことがあれば、まずは紙に書き出してみて、その中でメリット・デメリットを含めて整理をしてみる。そうすれば自然に大事なことは見えてきます。

 海外に行ってみたい、世界を見てみたいという理由は留学する上で十分な理由です。

藤本  何となくでも、行きたいか行きたくないかが大切。エッセーを書く段階でなぜ行きたいのかをクリスタライズしていけばいい。著名な研究者ではないのだから、左うちわで待っているだけじゃ何も起こらないもの。まだ若いんだし、当たって砕けてもなにも失う物はない。そういう気持ちが大切ですね。

横林  海外留学先を選ぶ上でコネクションは大事だけれど、まずは動かなければ何も始まらない。12年間、研究者として海外で研究費を獲得し続けている藤本先生だって、リジェクトを大量にくらっているからこそ今があるのだと思います。みんな順風満帆にはいかず、うまく行かなくてもめげずに努力し続けて留学しているんだと思います。どちらにせよ、動かなければ始まりませんね。

 あ、火鍋の締めの麺は辛い方! 雑炊は白い方で作ってね。それが最高だから!