こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。入院中の患者に、自分があまり詳しくない領域の症状が出た――。こんな時はみなさん、教科書を読んでみたり、その症状に詳しそうな友人に聞いてみる、いわゆる「友だちコンサルテーション」などをしながら、しのいでいるのではないでしょうか。しかし、多忙な医師同士、いつでもすぐに連絡がもらえるとは限りませんし、気も使います。今回は、精神科医である物部真一郎氏(exMedio社社長)のそんな悩みから生まれた皮膚科領域の遠隔診断支援アプリ「ヒフミル君」をご紹介します。

非専門領域の疾患に「60点の対応」はできるか
 「ヒフミル君」は、皮膚の写真と患者情報、あらかじめ決まっている項目を入力して送信すると、12時間以内に皮膚科専門医から無料で診断のアドバイスを得られるという医師向けアプリです。写真は10cmの距離から撮影したものと、30cmの距離から撮影したものの2枚を添付。患者情報は、年齢と性別、居住地。他に、持続性、発生日時、腫れの状態、紅斑消退、感覚、熱の有無、炎症反応上昇の有無、新規内服薬、初発の原因、周囲感染、コメントなどを入力できます。

 診断アドバイスをするのは、全て皮膚科医。中には、産休中や留学中などで臨床を一時的に離れている皮膚科医もいます。2015年3月に正式リリースし、既に数千人の医師がユーザーになっているそうです。

「ヒフミル君」の画面。左から順に、患者情報入力、画像添付、情報入力となっている。iOS版、Android版、ウェブβ版があり、全て無料。

 このアプリ開発のきっかけは、物部氏が精神科単科病院に勤務していた頃の経験でした。統合失調症や認知症で入院している患者でも、発熱したり疼痛を訴えることは当然あります。「精神科の専門医なので内科領域は専門ではありませんが、臨床研修で60点くらいの対応はできるように教育されています。しかし、皮膚科や眼科といった領域の対応は、正直あまり自信がありませんでした」(物部氏)。

物部真一郎氏●exMedio社社長
高知医科大学在学中の2005年に医療者向け出版社創業、10年同大卒業。初期臨床研修を経て、12年から精神科単科病院の東員病院(三重県東員町)に勤務。2013年6月から米国スタンフォード大学MBAに留学し、米国スタンフォード大学メディカルスクールにてGraduate Research Course単位も取得。14年12月より現職。

 もちろん、明らかに重篤な疾患の場合は専門医のいる医療機関に送ることを検討します。しかし、そもそも重篤なのかどうかが判断できない、紹介する手間や診療報酬上のデメリットを考えると「そこまでしなくても大丈夫だろう」と消極的に考えてしまうというケースがままありました。

 この問題を解決すべく、物部氏は2013年3月、全科を対象とし、非専門の医師が専門医に質問できる掲示板を始めます。しかし、「質問が散漫になり、成功しませんでした」。この頃に出会い、一緒に掲示板を立ち上げた麻酔科医の宮本竜之氏(exMedio社統括医師)は、こう振り返ります。

皮膚科に特化したワケ
 そこで次の手として考えたのが、領域を絞ったアプリでした。皮膚科に決めた理由は、特に高齢者において皮膚科領域の訴えが多くなることと、皮膚科や眼科の専門医が常勤する医療機関は多くないということ。「高齢者のうち7割近くが皮膚科疾患を有していますが、皮膚科専門医が診ている患者はそのうち2割程度。残りの5割は皮膚科医以外の医師が診ているというデータがありました」(物部氏)。これは精神科医だけの問題ではなく、他の診療科の医師にとっても大きな問題だと考えたのです。