こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。Cadetto世代のみなさんが現場の最前線に立つ10年、20年後、日本の医療は危機に瀕しているという指摘はご存じだと思います。雑誌「日経メディカルCadetto」の2015年秋号では、「僕たちの2035年」と題し、まさに10年、20年後の医療・ヘルスケアの未来について特集しています。しかし、こうした問題を日頃から考えさせてくれる機会はあまりないのではないでしょうか。今回は、医学にとどまらない現代の医療の課題をケーススタディー形式で真剣に学ぶ場、山本雄士ゼミの取り組みをご紹介します。

山本雄士ゼミを主宰する山本雄士氏

「医療の課題」を全力で考える場
 山本雄士ゼミは、今回の特集で取り上げている厚生労働省の「保健医療2035」策定懇談会メンバーでもある山本雄士氏(ミナケア社)が、「医療界の課題を解決したいが何をすればいいかが分からない」という学生の要請を受けて、2011年にボランティアで始めたもの。ゼミは、医療制度から医療経営、医療の質と量のバランスの考え方などの課題を、米ハーバード大学のハーバードビジネススクールで使用されているケースを基に、参加者全員でディスカッションする形式。医師・医学生のみならず、他業界のビジネスパーソンや行政など様々な分野の人が世代を超えて集まり、月に1度、主に東京都内で開催されています。

 8月に開催された山本雄士ゼミは、東京を離れての初の出張ゼミ。高知県の学びと交流の基地Ryoma Baseの協力を受け、ゆずの産地として名高い高知県安芸郡馬路村での開催となりました。

 Ryoma baseはもともと、医療において政策、経営、現場という3つの層が分かれており、それぞれの立場の理解が進まなくて問題が本質的に解決しないことに危機感を覚えた医師らが発足した多職種による学びの場(関連記事)。さらに、医療・介護領域におけるキーパーソンや問題意識を持った人をゆるくつなぐ「第三の場」を提供して理解者と出会わせることで、本人が職場で孤立感を抱くことを防ぐ目的もあります。今回は、Ryoma Baseの参加者、山本雄士ゼミのスタッフ、いずれにも参加したことがないという参加者が入り交じり、全国各地から30人ほどが高知県に集まりました。

「自分の価値観」を洗い出す
 山本氏は、「自分ならどうするか」という考え方をすることがなによりも重要だと強調します。「日本人は、『これが正解だ』と思うことを無意識のうちに自分の意見として発言してしまう傾向がある。しかし、そこでもう一度『本当はどう思っているか』としっかり考えると、自分の本当の価値観が見えてくる」(山本氏)。ゼミに参加すると、いろんな人の考え方の筋道を知ることができ、同時に自分の筋道も明確化します。山本氏は、「そこで見えた自分の筋道を話すことで説得力が増し、リーダーシップや物事を決定する際のスピードも上がる」とアドバイスします。

 こうした説明を踏まえて、1つ目のケーススタディー「レディナ・ルシュコー」が始まりました。ある病を患った本人や家族が、治療方針を巡って右往左往するというもの。医療者の対応や家族の行動を巡って、課題をあぶり出していくという実話を基にしたシナリオです。参加者には、全てのケースが数週間前に配布されており、あらかじめ読み込んでからゼミに参加することが前提となっています。