現在は、疾患名やフリーワード、画像の種類、疾患の種類、年齢、性別、症例投稿者などで投稿を検索できるようになっています。また、各症例には「Educational(教育的)」ボタン、各画像には「Typical(典型的)」ボタンがあります。これは、Facebookの「いいね!」ボタンのように、閲覧者が症例を見て「勉強になった」と思ったら「Educational」ボタン、「教科書のように典型的な画像だ」と感じたら「Typical」ボタンを押して投票し、その症例を投稿した人にフィードバックする仕組みがあります。検索結果はデフォルトでは投稿日時順になっていますが、「Typical」獲得数または「Educational」獲得数の順に並び替えることも可能です。「Typical」や「Educational」は、閲覧者がボタンを押した回数が集計されて表示されます。原氏は、「今後膨大な数の症例が集まったとしても、目的の症例に出会えるよう検索機能を今後もブラッシュアップさせていきたい。典型例を勉強したい人は、疾患名で検索した後に『Typical』が多い順にソートし、上からいくつか見てみるといったように、閲覧者が自分の目的に合わせた使い方を考えてほしい」と考えています。

疾患名やフリーワード、画像の種類、疾患の種類、年齢、性別、症例投稿者などで投稿を検索できる。

現場の熱意ある教育者が評価される世界に
 「Typical」や「Educational」などを閲覧者が投票できる仕組みにした裏には、原氏のもう一つの思いが込められています。「医学界の評価軸のメインは論文です。研究に取り組み、良い学術誌に採択されることが、高い評価につながります。しかし、教育者として現場で毎日臨床に携わっている医師も評価される世の中になってほしいと思っていました」(原氏)。

 教育者の中には、数年分の患者情報を記録した「ティーチングファイル」を作っている医師も少なくなありません。しかし、「こうした貴重な資源は、医師の机の中にしまわれ、せいぜい身近な数人の後輩に見せて教育するくらい。これをJTMIVに投稿してくれれば、世界中の医師が勉強できる上に、投稿者の評価も高まる」と原氏は展望します。そうした教育者が「Typical」票や「Educational」票をたくさん獲得することで、「熱意ある教育者の下には同じく熱意ある学生や若手医師が集まるような世界を作っていきたい」と強調します。

 なお、購読料は年間1万円ですが、一定以上の症例を投稿してくれる人は無料としました。「医師は何歳になっても自己投資して勉強する姿勢を持ってほしい」という思いから購読料を設定したそう。「医師は無料で情報が手に入ることに慣れているが、女性が美容にお金を掛けるように、医師も意識を高く持って勉強し続けることが当たり前という価値観に変えていきたい」と原氏は言います。なお、医学生は無料でJTMIVを購読できます。「医学生は、ボタンを押すなど投稿者への感謝の気持ちを込めた積極的なフィードバックをしてほしい」(原氏)。現在、医師や医学生の資格はFacebookログインにすることで確認しているという。

日本発のイノベーションで医療に元気を取り戻したい
 また、このプロジェクトを通して世界で活躍する人材を育成したいというのも原氏の強い希望です。米国心臓協会(AHA)や米国心臓病学会(ACC)の受賞経験を持つ原氏ですが、「今でこそ国際学会での発表常連組といわれる私を含めた周辺の若手医師も、医学生になったばかりの頃は英語が得意というわけではありませんでした」と言います。ただ、医学部に在籍しているうちに、常連組メンバーは全員がなんらかの形で英語に出会ったそう。そこでこのプロジェクトが英語と出会うきっかけになればと考え、症例投稿時には少なくとも診断名は英語で記入することとしました。「国内外の医師が症例を投稿し合い、コメント機能を活用して英語との出会いのきっかけになったり、医師同士の交流が生まれればいいなと思っています」。

 もちろん日本人以外の医師にも活用してほしいと考えています。「診断名と経過ごとの画像さえあれば、医師はなんとなく分かります。英語しか分からない医師でも、十分活用できるはずです。日本は、海外から“画像診断大国”と揶揄されることもあります。しかし、日本の医療の質は高いし、画像診断は日常診療に大変役立つツールです。なのでこれを逆手に取って、日本ならではの強みとアピールして、世界に発信していきたい」と画像診断に着目した経緯を語ります。

 現在は、症例を蓄積する段階だと言う原氏。「製薬会社の研究不正事件などで、日本の医療の信頼は低下しています。海外の医学学術誌に論文が通りにくくなっているという話も聞きますし、日本人自身が自信を失いつつあると感じています。なので、日本からイノベーションを起こして元気にしたいと思っています」(原氏)。

 なお原氏らは現在、JTMIVプロジェクトを手伝ってくれる仲間を学年・診療科を問わず募集しているとのこと。「もし興味を持っていただけた場合は私までご連絡いただければ幸いです」(原氏)。「一緒にイノベーションを起こしたい!」という方は、下記アドレスから原氏に連絡してみてはいかがでしょうか。

masahiko.hara◆dmi.med.osaka-u.ac.jp(◆を@に置き換えてください)