みなさんこんにちは!Cadetto.jp管理人の増谷です。今回は、実際の症例の臨床経過を、時系列に合わせて様々な画像や動画とともに学べるユーザー投稿型の医学学術サイト「The Journal of Typical Medical Images and Videos」(JTMIV)をご紹介します。

はら まさひこ氏●2005年島根大学卒。神戸赤十字病院での初期研修、大阪労災病院と大阪大学病院での後期研修を経て、大阪大学循環器内科学に所属。2015年から現職。

 医師が臨床能力を高めるには、当然ですが実臨床の経験を積むことが欠かせません。ベテラン医師と駆け出し医師の力量の差のほとんどは、この経験の差です。教科書を読んで一生懸命勉強しただけでは、その差はなかなか埋まるものではありません。

 JTMIVのプロジェクト統括責任者である原正彦氏(大阪大学病院未来医療開発部)は、その理由を「教科書には疾患の発生頻度や発症メカニズム、代表的な経過、治療法が書かれています。しかし、実臨床ではなかなか教科書通りにいきません。経験の浅い医師が予期していない合併症や転帰を取ることもよくあります。何かが起こってから対応するため、後手後手に回ってしまうのです」と分析します。

 画像診断でも、経験の差が大きく立ちはだかります。「画像診断の教科書は、例えばこれは胸部CT画像の教科書で、これは頭部MRIの教科書だといったように、1つの検査種別にしか対応していません。掲載枚数も、1疾患ごとに典型的な画像が1枚あるくらい。X線画像と心電図を合わせて考えるといった横断的視点も養われませんし、その症例がどんな転帰をたどったのかというステージごとの画像もありません」と指摘します。

 多くの場合、画像診断の教科書に掲載されているのは、かなり進行し分かりやすくなっている状態の画像です。経験の浅い医師の対応が後手後手に回ってしまうのには、ベテラン医師のように「今こういう状態ということは、次はこうなるな」と予想して早期に手を打つことができないため。例えば、「肺炎の患者に対して抗菌薬を投与し、3日後に患者さんの状態がどうなっていればいいのかが分からなければ、次にどう動けば良いかを判断することは難しいですよね」(原氏)。その疾患のスクリーニング検査時から確定診断までの様々なパターンを経験しているベテラン医師は、自身の経験に基づいて適切な予想を立てることができるのに対し、経験が浅い医師は次に何が起こるか判断することが難しいのです。

時系列で先輩医師の治療を追体験
 こうした経験の差を埋めようとするのが、JTMIVです。症例ごとに、所見や実施した治療を記述。スクリーニング検査時点から確定診断し、治療した結果どうなったかを時系列で並べます。適宜、様々な種類の画像、動画を複数枚添付することが可能。原氏は、「これまでの検査種別に特化した縦断的な教科書と違い、CT画像とX線画像と皮膚所見を横断的に見たり、診断までの流れを追って見ることができます。つまり、先輩医師がどう悩んで、何の治療をし、その結果どうなったかというところまでを追体験できるのです」と語ります。このように、時系列でまとめた投稿が集まれば、画像・動画共有を兼ねた症例データベースができあがります。

様々な画像や動画を複数添付できるため、横断的な視点を養える。