人間の尊厳を保つ3大条件
 現在は、訪問診療を行う歯科とも提携しています。澤登氏が口腔ケアの重要性を認識したのは、脳梗塞後片麻痺の90歳男性を担当したことでした。男性は胃瘻を造設していましたが、あるとき介護している妻から「口から少し食べさせてみたら、目の輝きが違った」と聞いたそう。また、癌の終末期患者の入れ歯を直し、経口摂取できるようにしてみたところ、ずっと食事を口から食べることができなかったその患者は「おいしい」と大変喜びました。こうした経験から澤登氏は、栄養価は変わらなくても口から食べることの重要性を再認識し、「在宅医療は、命をどう延ばすかというよりも、生活の質をいかに高め、支えるかに主眼が置かれた医療なんだ」と実感しました。

 生活の質を高める上で重要なのは、いかに人間の「尊厳」を保つかということと考えた澤登氏。尊厳の条件として、「動ける」「排泄できる」「(口から)食べられる」という3つを挙げ、「どれかが欠けたらダメだということではありませんが、この3条件をできるだけ長く持たせたい」と話します。

 「動ける」を支えるのは、マッサージと理学療法。「排泄できる」を支えるのは訪問看護。「食べられる」を支えるのは訪問歯科による口腔ケア。フレアスはこうした総合的な在宅医療サービスを提供する体制を全国的に整えつつあります。在宅マッサージは、既に北海道から沖縄まで、約80カ所の拠点があり、約350人の鍼灸マッサージ師が社員として在籍。訪問看護は8カ所で、在籍する看護師は約50人。訪問歯科で提携する歯科医院は3カ所ほどです。直近では売上高25億円という規模に成長しています。「今後は、これら拠点の数を増やしつつ、将来的には医師による在宅診療も含めて提供していきたい」と展望を語ります。

教育モデルと医学的エビデンスを構築して世界展開を目指す
 そして現在、同じくらい力を入れているのが教育と研究です。社内に「フレアスアカデミー」という教育・研究部門を立ち上げ、徹底した理念教育や、エビデンス作りに取り組む予定です。「マッサージは、個人で開業している人が多く、まとまったエビデンスがなかなか世に出てこない業界でした。フレアスでは年間延べ70万くらいの症例が集まるので、今後は論文を執筆して国内外に発表し、エビデンスを構築していきたい」(澤登氏)。

 今後高齢社会を迎えるのは日本だけではありません。現在は、中国の企業との提携も進行中だとか。澤登氏は、「在宅医療サービスにおける教育モデルや医学的なエビデンスをいち早く確立し、日本や世界の高齢社会を支えていきたい」と強調しました。