みなさんこんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。日本では、1年間で約25万組の夫婦が離婚しているのはご存じの方もいるかもしれません。日経メディカルCadettoでも、「医者の離婚」の特集を組んだこともありました。しかし同じ国でも時代が違えば事情も大きく異なります。江戸時代、離縁状は夫から妻に手渡されるものであり、男性が一方的に離婚を決めることはあっても、女性から離婚を求めることはほとんどできなかったとされています。今回は、故・井上ひさし氏の時代小説「東慶寺花だより」を原案とし、新米医師の主人公を通してそんな江戸時代の離婚事情を描いた映画「駆込み女と駆出し男」をご紹介します。

原案は井上ひさし氏の時代小説「東慶寺花だより」。東慶寺の映像は、トム・クルーズ主演の映画『ラスト サムライ』の舞台にもなった兵庫県姫路市の書寫山圓教寺で撮影した。(C) 2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

離婚したい女性たちが駆け込む「縁切寺」
 女性側から一方的に離婚を求めることができなかったという江戸時代ですが、妻が駆け込んで一定期間在寺すれば離婚できる「縁切寺」という幕府公認の尼寺がありました。江戸時代を通じて駆け込みを受け入れていたのが、鎌倉の東慶寺と、上州(群馬県太田市)の満徳寺でした。

 妻が東慶寺に駆け込む意思を表明した後、離婚が成立するまでにはいろんな過程を要します。まず、寺役人による取り調べが行われ、妻の実家の者が呼ばれます。そこから妻方と夫方の協議が始まり、協議の結果、離婚が成立すれば内済離縁となります。協議が不成立となった場合は、寺法離縁となる場合があります。寺法離縁は、寺の権威による離縁で、妻が24カ月は入寺することを条件とするものでした。この縁切寺と、そこに駆け込む意思を表明した女性たちとその夫、協議期間中の女性の身柄を預かる御用宿の人々の人間関係で話が進みます。

大泉洋が駆け出しの医師を熱演
 大泉洋演じる主人公の中村信次郎は、駆け出しの医師として修行中の身。御用宿「柏屋」の主人である源兵衛(樹木希林)を頼り、居候させてもらうことにします。実は曲亭馬琴(山﨑努)のような戯作者にも憧れている信次郎にとって、東慶寺に駆け込んだ女性たちの事情聴取書は人間を知るための宝の山だったのです。さらに、信次郎は駆け込んできた女性の聞き取り調査も担当することになります。

戯作者に憧れる見習い医師を演じる大泉洋(C) 2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

 ここで駆け込んでくるのが、七里ガ浜・浜鉄屋の腕のよい鉄練り職人で、顔に醜い火ぶくれがあるじょご(戸田恵梨香)と、日本橋唐物問屋、堀切屋三郎衛門(堤真一)の妾であるお吟(満島ひかり)、武士の妻女である戸賀崎ゆう(内山理名)です。それぞれが夫への憎悪や愛、復讐心などの複雑な事情を抱えています。長いセリフでも流暢に話す大泉洋はまさに戯作者を志す若者にぴったり。満島ひかりの徒女(あだしおんな)っぷりも、かなりしっくりきています。

東慶寺に向かう道中で出会ったじょご(戸田恵梨香)とお吟(満島ひかり)。足に怪我をしたお吟をじょごが大八車に乗せて一緒に駆け込んだ(C) 2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会