ウェブは入り組んだ情報を分かりやすく伝えるのに向いている
 2015年2月にメドレーの共同経営者として代表取締役に就任した豊田剛一郎氏(30歳)も、日本と米国で臨床と研究の経験を有する脳神経外科医です。今後は、医学辞典や医学教科書などを基に、専門医からのインプットを加えて疾患の項目数を広げていく予定。豊田氏は、「患者が知るべき、知っていた方がいいレベル感で考えると、項目数は1000から2000程度になると思っている」と言います。

アンダーラインがある単語の上にマウスを合わせると用語解説が表示される

 インターネットで疾患情報を伝える意義としては、「情報の連鎖性」を挙げる豊田氏。例えば、急性硬膜下血腫の項目を見ると硬膜血腫といった一般の人にはなじみのない言葉が出てきます。しかし、難しい用語をいちいち説明していると文章がとても長くなってしまうという問題があります。そこで用語集を作り、用語の上にマウスを合わせると用語解説がされるような仕組みも作ったそうです。さらに、調べた疾患に関連する可能性がある疾患の情報ページにも簡単にアクセスできる仕組みもあります。豊田氏は、「入り組んだ医学用語や疾患間の関連情報を説明しやすいのがインターネットの強み」と強調します。

 また、最新の治療で、まだ医学的に意見が分かれている段階の治療法や、医師ごとに考えが異なる治療法については、否定や肯定をするだけでなく、ページを読んだ人自身が考えるためのツールにしてほしいといいます。沖山氏は、「考え方を1つだけ示すのではなく、複数の意見を載せるべきだと思うので、登録医師の自由意見を掲載することもできるようにしてある。その上で、一般の人が自分で考えるようになってもらえればうれしい」と語ります。

祖父の胃全摘は正しかったのか?
 もともとメドレー社は、2009年に「医療・ヘルスケア分野の課題を解決したい」と瀧口浩平氏(30歳)が創業した企業です。瀧口氏が起業するきっかけとなったのは、地方に住む祖父が胃癌に罹患したことでした。「漁師だった祖父は、胃癌が見つかっても漁に出られるほど元気でした。しかし、胃の全摘手術を受けることになり、好きだった食事ができなくなってしまったときから、一気に体力が落ちていきました」と瀧口氏は振り返ります。

 食道楽だった祖父にとって、胃の全摘が良い判断だったとは思えなかった瀧口氏。祖父本人も亡くなる前に後悔の念を口にし、「医療の大きな目的は寿命を延ばすことかもしれないが、価値観は人それぞれなので、患者にとって最適の医療と一致するとは限らない。人生の最後に後悔を残すべきではない」と瀧口氏は考えるようになりました。

 瀧口氏はまず、医療について勉強するために大阪市の病院で主に事務方としてインターンを始めます。そこで直面したのは、医療者の過酷な労働環境でした。「大阪の難波という都市部でも人材不足にあえいでいる実態に驚きました」(瀧口氏)。まずはその課題を解決すべく、医療・介護従事者の求人サイト「ジョブメドレー」を立ち上げます。ジョブメドレーの特徴は、「復職」に着目したところ。つまり、有資格者ながら結婚や育児、介護などで離職した人材の復職支援に力を入れている求人サイトです。今では、登録者数4万人、掲載求人数2万6000件となり、2011年からは毎年2倍以上の成長を継続しているそうです。

復職支援に力を入れる医療・介護従事者の求人サイト「ジョブメドレー」

 次に瀧口氏が目を付けた課題が、患者向けの医療情報を充実させることです。都会と地方では受けられる医療がそもそも違うことにも驚いた瀧口氏は、「患者も医療の情報を知っておかなければならない」と考えるようになりました。しかし、情報を収集する手段が分からないし、正しい情報を取捨選択することも難しいと感じます。そこで小学校時代からの友人である医師の豊田氏を共同経営者に迎え、正確な医療情報を発信するウェブサービスのメドレーを2015年2月に立ち上げました。

 豊田氏はメドレーの今後について、「正しい医療情報を探す際の入り口になっていければ」と期待を込めます。そのためには、情報が医師のチェックによって一定以上の正確さが担保されていること、さまざまな疾患が情報量の濃淡なく網羅され情報がぶつ切りにならないことが必要です。現在は趣旨に賛同する医師100人以上が登録しているとか。メドレーでは今後も登録医師を募集していくそうです(詳しくはこちら)。

 現在は医師の協力を得て医療情報を蓄積する段階であり、今後は患者やその家族など一般ユーザーからも体験談や口コミを集め、サービスを充実させていく予定です。「まずは、医師から見ても患者さんから見ても便利で有益な医療情報インフラを作り上げることが重要です。それができれば、正しい医療情報を求めている患者さんと、正しい医療情報を提供したいと考えている病院や企業の双方のニーズを満たすようなサービスの可能性が広がると考えています」(豊田氏)。

メドレー社のオフィスにて撮影。左から順に、メドレー医学監修担当の沖山翔氏(医師)、代表取締役の豊田剛一郎氏(医師)、代表取締役社長の瀧口浩平氏

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