みなさんこんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。ALS筋萎縮性側索硬化症)と言えば、2014年夏に「アイスバケツチャレンジ」で注目を集めたことが記憶に新しいですね(関連記事:「ALSアイスバケツチャレンジ」の興味深さと恐ろしさ)。このチャレンジには、ALS罹患者も多く参加しました。

 2015年1月に73歳を迎えた英国の理論物理学者スティーブン・ホーキング博士も、現代宇宙論の高名な研究者でありながら、チャレンジに指名されたALS罹患者の1人です(ただし博士は自身の代わりに3人の子どもたちに氷水をかぶってもらったようです)。今回は、ホーキング氏の元妻、ジェーン・ホーキングの回顧録を映画化した『博士と彼女のセオリー』(原題:The Theory of Everything)をご紹介します。

 物語は、1963年に英国ケンブリッジ大学のパーティで、スティーブン(エディ・レッドメイン)とジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)が出会うところから始まります。ユーモアのセンスに共感した2人は、すぐに意気投合。恋の効能か、研究テーマが行き詰まっていたスティーブンにはひらめきが訪れ、「宇宙の全て」を説明するただ1つの方程式を解明しようと研究に励みます。

大学で出会って意気投合していくジェーンとスティーブン(c)UNIVERSAL PICTURES

 しかしスティーブンは、この頃から自分の身体に異変を感じ始めます。ついに彼は、医師から運動ニューロン疾患MND)と診断名を告げられると同時に、「余命2年」という衝撃的な告知も受けます。ショックを受け、寮の部屋に引きこもるスティーブン。ジェーンとの連絡も絶ってしまいます。しかし、寮の部屋を訪れ励まし続けるジェーンは、スティーブンとの結婚を決断します。

スティーブンを献身的に支えたジェーン・ホーキングを演じたフェリシティ・ジョーンズ(c)UNIVERSAL PICTURES

 ジェーンの献身的な介護とスティーブンの努力があり、スティーブンは博士号を取得。長女ルーシーも誕生します。その後1974年には「ブラックホールの消滅」を提唱したホーキング放射の理論を発表して科学雑誌「ネイチャー(Nature)」の表紙を飾り、スティーブンは時の人となります。ただ、順風満帆に見える裏で疾患の進行は止まりません。そしてスティーブンは声を失い、やがてジェーンとも別離することに…。

 本作は実話が基ですが、いわゆるサクセスストーリーではありません。甘いだけではない結婚生活を妻の目線から描いた、ラブストーリーです。ホーキング博士の輝かしい業績は、自身の膨大な努力と、ジェーンの多大なる犠牲の上に成り立っていることが映し出されます。

 また、発症後は長い付き合いになる車椅子についても、正確な描写のために大きな労力が割かれています。最初は通常の車椅子。電動車椅子になり、やがてコンピューターや発声装置を付属した車椅子へと進化していきます。製作スタッフは、膨大な調査を行ってできる限り本物に近づけたそうです。

ALS発症前から進行後までを演じ切り、高く評価されたエディ・レッドメイン(c)UNIVERSAL PICTURES

 発症前の21歳から症状が進んだ近年までのホーキングを演じ、第87回アカデミー賞主演男優賞や第72回ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインの演技は、博士本人かと見まごうほど。「病気を正確に描写する責任を感じた」と言うレッドメインは、MND患者の自宅や入院先を訪問したり、身体動作ディレクターとともにMNDの進行ステージを専門医から正確に学んだそうです。

 ケンブリッジのキャンパスを美しく描き出した映像と、本作で第72回ゴールデン・グローブ賞の作曲賞を受賞したヨハン・ヨハンソンの音楽が素晴らしすぎて、それだけで涙が出ます。特に、2人が出会って間もない頃に絆を強めるメイ・ボール(5月頃に大学で開催される公式のダンスパーティ)のシーンは必見。途中、「え?」と戸惑うような無駄な展開もなく、博士と妻ジェーンの愛や苦悩が描かれます。離婚を経ても、現在は3人の子どもとともに良い友人関係を築いているというホーキング博士とジェーンの物語、オススメです!

ケンブリッジで開催されるメイ・ボールのシーンは息を飲む美しさ(c)UNIVERSAL PICTURES

タイトル:博士と彼女のセオリー
公開日:2015年3月13日 TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
原作:「Travelling to Infinity: My Life with Stephen」 ジェーン・ホーキング
原題:THE THEORY OF EVERYTHING / スコープサイズ / ドルビーSRD / カラー作品 /上映時間124分/ 日本語字幕:松浦美奈 / 字幕監修:自然科学研究機構長 佐藤勝彦/ユニバーサル映画
配給:東宝東和株式会社


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