「赤ちゃんに対して人が自然に行う技術」がユマニチュードの基本と一致
 ユマニチュードは、「人間をケア」するための哲学です。基本となる4つの柱のうちの1つである「話す」というのは、声掛けのことです。他の動物とは違い、ヒトは理性を持った生き物です。そのため、自分に起こることを説明されなければ不安に感じてしまうのです。「犬に説明は不要ですが、認知症の人には説明が欠かせません」(ジネスト氏)。施術者はケアを行っている最中は常に今何をしているのか、声掛けを欠かしません。

 また、「立つ」のも基本です。できる限り起立した状態でケアを行います。多くの施設は臥位のままシャワーをしたり清拭したりしますが、ユマニチュード認定施設では40秒間立位が取れる人であれば、座位と立位を組み合わせることで、臥位のまま保清することはないようにするそうです。

 残りの「見る」、「触れる」は、赤ちゃんを抱いたりあやしたりするときのテクニックと同じです。生後3カ月くらいの赤ちゃんを抱くとき、大人は顔と顔を近づけて見つめます。触れ方も、なるべく広い面積でゆっくりと抱いたりなでたりします。赤ちゃんに対して、かわいいね、愛しているよと前向きな言葉を掛けます。これは赤ちゃんに限らず、恋人や大切な人など自分がポジティブな人間関係を築きたい相手に自然と行っているコミュニケーションの基本。すなわちこれがユマニチュードの基本でもあるのです。ジネスト氏は、「私たちは赤ちゃんや恋人には自然にこのテクニックを使っています。しかし、高齢者に対してはなかなか自然にこのテクニックを使えていないというだけなのです」と解説します。

 脆弱な高齢者に対して、ケアを行う人がどの程度目を合わせてケアをしているか、ジネスト氏は調べました。すると、アイコンタクトが成立していたのは1日に9回未満だったといいます。言葉も短く、声掛けする時間は24時間中でたった120秒だけでした。ユマニチュードを学習した前後である看護師のアイコンタクトの状況を比べてみると、ケアの間に目を合わせる時間が60倍に延長したという日本の例も紹介されました。当たり前と思っている「目を見る」ことも、実は学ばなければ実践できないのだとジネスト氏は指摘します。

 また、冒頭で本田氏が紹介した70歳代女性のケースでは、シャワーしながら介護者が無意識のうちに何度も女性の腕をつかんでいました。「腕をつかむのは、ケア中には無意識にやってしまいがちですが、日常で腕をつかまれるのは連行される時くらいです」(ジネスト氏)。腕をつかむのではなく、手を握ったり支えたりすべきなのです。全ての行動には非言語化されたメッセージが含まれています。例えば、手の握り方1つを取っても、息子との手のつなぎ方、恋人との手のつなぎ方、友達との腕の組み方など、ちょっと変えるだけでその行動が伝えるメッセージは全く異なるものだとジネスト氏は説明します。

 ユマニチュードの考え方と技術について具体的に解説したジネスト氏は、最後に会場に向かって「大切なことは、ケアする人を責めないということです。彼ら、彼女らはとても優しい人たちで、一生懸命患者さんのために良いことをしたいと頑張っているのです」と語り掛けました。そして、「ケアをする人とは何者かという哲学と、コミュニケーションの4つの柱、そしてそれぞれのケアに必要な5つのステップを身に付けることで、ケアを受ける人、ケアを実施する人双方が心地よい時間をともに過ごせたと感じることができるようになるのです」と結びました。

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