命をテーマにしたプログラムでは、医学生に協力してもらって実際に心臓が動いているところを見てもらいました(野中)

――野中さんは、どのようなことに関心を持って被災地の子ども達と関わる活動に参加したのでしょうか?

野中 私は、臨床と合わせて教育にかかわるような医師になっていきたいという漠然とした思いを持っています。私の周りの尊敬する医師達は、皆さんとても教育熱心なんです。医学生の教育はもちろん、もっと広い意味で、次の世代への教育も実践しています。私はこれまで、地域公衆衛生活動の一環で健康に関する市民講演をしたり、アカデミーキャンプで命についての授業プログラムを受け持ったりしてきました。

渡部 教育って、人を作ること。本当に大事だと思います。私も、医学部に入って医学教育に興味を持ちました。というより、自分が受けている教育に疑問を抱いていました。私は途上国支援がしたいと考えていて、途上国で困っている人を救うために最適なのは医師かなと考え、医学部に進学しました。ですが授業では医学について学ぶばかりで、医療以外の分野や社会問題などについて学ぶ機会はほとんどありませんでした。途上国で働くにはさまざまな知識が求められるのに、この教育をずっと受けていたらそういう医師にはなれないのではないか。途上国支援ができる医師になれないのなら、自分はこのまま医師になる必要があるのか――。そう考えて、入学後しばらくは自分の進路に迷っていました。

はじめて聴診器を使った彼女。どんな音が聞こえるのか耳を澄ましている表情が印象的でした(野中)

 しかしあるとき、「学ぶ機会がないならば、自分で機会を作ればいいのではないか」と思うようになりました。そこで友人と一緒に学内で学生団体を立ち上げ、活動を始めました。この団体では、メンバーが1年を掛けて1つのテーマを掘り下げ、行動に移すという形式にしています。週に1回は集まり、毎回プレゼンターを変えて、決められたテーマについて発表をしてもらったり、ディスカッションを行います。

 また座学を重ねるだけでなく、実際の現場はどうなのかを知るため長期の休みには自分達でスタディーツアーを企画し、国内外を問わずフィールドワークに行きます。そして、勉強会やフィールドワークで感じたこと、考えたことを踏まえて、さらに何を学ぶべきか、自分の地域で何ができるかを考えアクションを起こすところまで持っていきます。

 例えば、2013年度のテーマは「災害医療」だったので、災害時に起き得る様々な問題や支援時の心掛けなど様々なことを学び、長期の休みに東北地方の被災地でフィールドワークを行いました。そこでは、多くの被災者の方から「自分たちの状況を教訓にして、二度とこんなことが起きないようにしてほしい」と強く訴えられました。その後大学のある岡山県に戻って自分の地域のことを調べてみると、あまり災害がないこともあり、災害への危機感が非常に低いことが分かってきました。そのため、フィールドワーク後は防災について学び、地域の防災意識の向上を目指して活動を始めました。