5人の子どもを抱える医師夫妻が、留学までできたワケ
 セミナー後半に登壇したのは、特別講演ゲストの吉田穂波氏(国立保健医療科学院)と吉田敦氏(獨協大学感染制御センター)のご夫妻。吉田夫妻は、日経メディカルの連載「吉田穂波の『子育てしながらハーバード留学!』」にも書かれているとおり、現在では5人のお子さんを持ちながら活動されています。講演では、これまでのキャリアや悩み、問題解決に用いているメソッドなどが語られました。

夫妻で登壇した吉田穂波氏(国立保健医療科学院)と吉田敦氏(獨協大学感染制御センター)

 ドイツ臨床留学中に第1子出産を経験した吉田穂波氏(以降、穂波氏)は、当時の職場から「これであなたも一人前」と祝福され、大喜びされたと言います。その後、イギリスで産休・主婦として過ごしていた穂波氏でしたが、やはり臨床が忘れがたく、復帰を果たします。その後は出産などのライフイベントに合わせて働き方を変化させることで家庭と仕事を両立してきた穂波氏。そこで実感したのは、「困ったときに人に助けを求めること」が重要だということでした。

 2010年、内閣府がボランティアを受けいれるためのキーワードとして作成した言葉だという「受援力」。これは、日本人が苦手とされる「助けを求め、助けを受ける心構えやスキル」のことだそうです。東日本大震災後に広まり始めた言葉ですが、「被災地の人たちだけでなく、子育て中のお母さん全てに必要な力」と穂波氏は主張します。

 「頼むことはわがままではなく、相手を信頼している証とポジティブに捉えることが重要」と語る穂波氏。助けを求める際の作法として、(1)相手のできる範囲を明確にする、(2)相手の立場を考え、頼むことを引き受けてもらいやすいように自分も工夫する、(3)「すみません」ではなく「ありがとう」などを提案しました。

山王病院(東京都港区)産婦人科医の富坂美織氏。米ハーバード公衆衛生大学院を卒業後、マッキンゼー&カンパニーでコンサルタントとして活動という異色の経歴を持つ

 最後に、山王病院(東京都港区)産婦人科医の富坂美織氏が、「2人で知っておきたい妊娠・出産のリアル」と題して、年齢が上がるほど妊娠が難しくなるデータや不妊治療の現実を、昨年から知られるようになった独身女性の卵子保存(「動き出した未婚女性の卵子凍結保存」)などにも触れながら解説しました。

 また、米ハーバード公衆衛生大学院を卒業後、マッキンゼー&カンパニーでコンサルタントとして活動していたという異色の経歴を持つ富坂氏は、自らの経験から若手女性医師に届けたい言葉として、「医師免許は魔法の杖。臨床も、公衆衛生も、コンサルティングも、行政もできる」と語り、「自分で手に負えない時は、まわりの力を借りよう。アウトソーシングも大事な仕事法」と助言しました。

終了前のパネルディスカッションでは、特別講演ゲストにたくさんの質問が寄せられました。

 終了前のパネルディスカッションでも、会場からたくさんの質問が飛び交う盛況な会となりました。

 主催者の伴氏はもともと横浜出身で、4年前まではずっと関東に住んでいたそうです。ではなぜ高知に?と聞くと、「若手がやりたいことができる土壌」がある高知に魅力を感じたためだとか。実は高知は初期研修医同士が病院間の壁を越えて飲み会や勉強会などさまざまな交流を行う「コーチレジ」のように、多くの活動が立ち上がっており、研修医や若手医師の活動が活発なのです。伴氏は「このようなイベントをきっかけに、高知から日本へ、日本から世界へと大きな活動につなげていきたい」と意気込みます。

 お話を聞いて、すっかり“高知びいき”になりつつある管理人増谷ですが、これからはよりいっそう、各地の勢いある活動に注目していきたいと思います。