• 瀬戸 僚馬氏 Ryoma Seto, RN, Ph.D
  • 年齢 : 33歳
  • 現在の職業 : 大学教員
  • 現在の勤務先 : 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科(講師)
  • 出身大学・学部・卒業年度 : 国際医療福祉大学・保健学部・平成12年度
  • 国際医療福祉大学大学院・医療福祉学研究科博士課程・平成21年度・博士(医療福祉経営学)
  • 臨床専門分野 : 外科・整形外科・泌尿器科・眼科の外科系混合病棟
  • +αの道に入る前の臨床経験年数 : 3年
  • +αの道に入った後の臨床経験年数 : -
  • +αの道に入った際の年齢 : 24歳
  • +αの道の種類 : 医療情報

何故+αを選んだのか

 小学生の頃からコンピュータに触れていたこともあって、もともとITには興味がありました。しかし、数学や物理は苦手でしたし、医療や福祉という分野に興味があったので、進学したのは保健学部でした。

 看護学生の頃、日本IBM基礎研究所から赴任された細井良三教授(現・東京有明医療大学非常勤講師)が、北米で情報システム構築を専門にやっている元看護師の人を講義に連れてきてくれました。そういう進路があることを知り、「おもしろそうだなあ」とは思っていました。

 病院で看護師として働いてみて、趣味としてのITが、本当に医療とくっつき職業として成り立つことを知ったときには、迷わず手を上げました。

どのようにして+α道に入ったのか

 外科系混合病棟で臨床業務をしていたとき、病院の建て替えがあって、オーダエントリシステムを導入する話が持ち上がりました。その際、看護部長に抜擢していただき、病棟に携帯端末を導入するプロジェクトに関わるようになりました。新人にもかかわらず、システム導入の仕様書を書き、ベンダー選定やその後のシステム導入に携わりました。 この仕事が面白かったので、医療情報という職業を本気で意識するようになりました。

 その頃、卒業研究を発展させてまとめた「クリティカルパスのケアカテゴリーの標準化」という論文が医療マネジメント学会誌に掲載されたので、その論文をもって学部時代の指導教員に挨拶に行きました。そこで出会った方々と近くなり、大学病院に移って情報システムの専任者としての立場を与えられました。このときも身分は看護師のままですが、臨床の仕事は卒業することになりました。ここでシステム構築や運用管理、これらのシステムに蓄積されたデータの分析、ホームページの管理などを幅広く経験しました。

 この間に医療情報技師や診療情報管理士の資格を取り、大学院にも行って国際医療情報学連盟や日本医療情報学会の会長を歴任された開原成允先生(故人)のもとで医療情報学を学びました。

 博士課程も残り1年となり、次のステップとして職種を変えて別の病院で働くか、研究者になるか、いっそベンダーで働くかを模索していたときに、今の職場の上司から声をかけられて再び転職しました。今は大学で医療情報技師や診療情報管理士を養成するとともに、医療情報システムに関する研究に取り組んでいます。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

 医療情報の仕事に専門的に取り組んで思ったのは、この仕事も立派な医療の実践だということです。

 糖尿病のスライディングスケールの指示入力画面を設計することを通じて、インスリンの使用方法を少しなりとも標準化したり、処方オーダの代行入力業務が薬剤師に偏っていることを見つけて、医師事務作業補助者への業務委譲を進めたり、その一つ一つが間接的に患者さんに還元されていると感じています。

 臨床時代は、白内障の術後患者に点眼薬を渡し忘れてご自宅まで届けたり、血管の走行と正反対に静脈留置針を入れたり、まさに「おたんこ」な面も大いにありましたが、患者さんと直接話をするのが大好きでした。

 ときどき「臨床を離れて寂しくないか、戻りたいと思ったことはないか」と聞かれます。しかし、教育・研究の先には臨床家や患者さんの実践をイメージできる訳ですから、寂しいと思ったことは一度もありません。

 この仕事が私には向いていると思いますし、この仕事が私なりの医療の実践です。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

 医療情報の仕事は、現場をイメージできることがとても大事だと思っています。

 たとえば、経管栄養のオーダを発行する画面や運用を考えようとすると、薬剤扱いと給食扱いとの違いや、栄養剤に加える白湯の入力方法などを細かく詰めていかないと、役に立つシステムは作れません。また、糖尿病を持つ手術患者の在院日数のばらつきを議論する際にも闇雲にデータ分析する訳にはいきません。このような時に、臨床で培ったカンが働くことは大きかったと思います。

 もちろん、10年以上前のわずかな臨床経験ですので、これをもとに医療上の価値を判断するのはおこがましい話です。現場にいた経験があるからこそ、「情報専門職としては、医療上の価値判断はしない」というポリシーにぶれが出ないのだと思います。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 医療界の中での私の役割は、「全体最適のために病院内の縦割りの壁を壊す」ことだと思っています。

 臨床の看護師や大学病院でのシステム担当を通じて私が感じ続けたのは「職種・部署の壁」です。学生の頃に理学療法士や事務職員の卵と同じ釜の飯を食う仲だった私にとって、そこに壁があることを知ったのは就職した後の話です。ただ、どの職種も食わず嫌いなだけで、膝を突き詰めていけば信頼関係を築けるし、建設的な議論がいくらでも可能なことを、システム構築を通じて感じました。

 その夢の一つは、学会という形で今年の夏に実現します。ある学会の大会長という任を与えられたので、そのテーマは「多職種協働とIT」としました。研究者として、壁が壊れるようなエビデンスをどんどん貯めていきたいのです。

 教育職としても、「壁」意識を持たずに多職種で情報を共有し、医療の問題を一緒に考える人を養成する仕事を続けていきたいと思っています。現時点で「次の仕事」を目指す必要性はまったく感じていませんが、これは「ご縁」によるものですから何とも言えません。臨床で活躍されている方々と会話し、そのお役に立つ謙虚ささえ忘れなければ、自然に道が開けてくると信じています。

ブログ・ホームページなど
http://plaza.umin.ac.jp/~seto/(個人)
http://www.jami-ni.jp/2012/(医療情報学会)
著書など
・はじめてのメディカルセクレタリー(医療タイムス社)
・看護管理ガイドブック・上級編(杏林図書)
ご自身が紹介されたマスコミ媒体など
・徳島新聞2011年1月22日号
 「保険会社用診断書や紹介状返書… 県内医師事務に大忙し」
・精神科看護2012年5月号
 「NEXT VISION 第13回日本医療情報学会看護学術大会・・・瀬戸僚馬」

 

※「臨床+α」の詳細はこちらをご参照ください⇒http://rinsho-plus-alpha.jp/