• 星野 純一氏 Junichi Hoshino, MD, FACP
  • 年齢 : 38歳
  • 現在の職業 : 医師
  • 現在の勤務先 : 虎の門病院・UCLA School of Public Health・Department of Nephrology・Terasaki Foundation Laboratory
  • 出身大学・学部・卒業年度 : 横浜市立大学医学部・1997年卒
  • 臨床専門分野 : 腎臓内科・膠原病
  • +αの道に入る前の臨床経験年数 : 13年
  • +αの道に入った際の年齢 : 37歳
  • プラスα道後の臨床経験年数 : 1年
  • +αの道の種類 : Epidemiology・Biostatistics(MPH)

何故+αを選んだのか

 学生時代から、研究者よりも臨床医としてキャリアを積みたいと考えていました。臨床業務は非常に好きで充実した日々を送っていましたが、卒後10年を過ぎた頃より、単に臨床経験を積んでいくことの限界を感じるようになりました。同時にEBMは過去の医学の蓄積で、最新の医学はベッドサイドにあり、それを世の中に発信していくことの重要性を実感するようになりました。論文とベッドサイドのギャップを感じ、それを埋めたいと思ったのです。

 例えば多発性嚢胞腎に対する動脈塞栓術・原発性アミロイドーシスに対する大量メルファラン+自己幹細胞移植・悪性高血圧に対するHANPの効果など、臨床経験上、明らかに有効と思われる治療法であっても、特に国内で十分に認識されていないものが数多くあります。また一方で、臨床医にとっても、論文の背景にある真実を吟味する力が必要であると感じました。

 全国多施設共同臨床試験のプロトコール作成・疫学者との出会いなどを通じ、臨床+αとして本格的に疫学(臨床デザイン)・統計を勉強したいと思うようになりました。

どのようにして+α道に入ったのか

 上記の動機に加え、単純に海外生活を送ってみたかった点、英語が上達したかった点、2年間の海外留学資格を病院の母体である国家公務員共済組合連合会から得た点から、米国大学院でMaster of Public Health(MPH)取得を目指すことにしました。しかし、臨床業務の合間にTOEFL, GRE scoreを用意するのは平坦な道ではありませんでした。

 また留学先の選定に際しては、MPHコースでの知識の習熟だけでなく、疫学臨床研究が盛んな研究室へ同時に出入りすることを薦められ、大学院と共に臨床ラボも探しました。

 更に、家族と共に留学生活を送る予定であったため、気候・治安・外国人の住み易さなども考慮し、最終的にUCLA School of Public HealthのMPHコース(specializing in Epidemiology)を選択しました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

 ここ10年のEpidemiologyの進歩は目を見張るものがあります。この大きな転換期に、Classic EpidemiologyやBiostatisticsに関する知識のみならず、最新のModern Epidemiologyに触れることができたのは大変有意義でした。

 具体的には、たとえランダム化比較試験が倫理的に困難な疾患であっても、さまざまな解析手法(External adjustment, Marginal Structure Models, Instrumental Variablesなど)を効果的に駆使することで、バイアス・交絡の影響を減らし、場合によっては未測定であっても、より真実に近い結果を得ることが可能になってきています。

 また統計ソフト(STATA,SAS)を習熟できたことや、疫学家・統計家とコネクションを持てたのは将来の財産になると思っています。

 最大の思い出は、修士論文作成中にうっかり`statistically significant(統計学的に有意である)`と記載し、疫学の大家である指導教授に怒られたことでしょうか(笑)。(注:疫学ではp値の本来の意味を尊重するため、このような表現は安易にしません)

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

 基礎研究に実験技術が必要なように、臨床研究には疫学・統計知識が欠かせないと考えます。臨床研究は非常に多様性に富んだ集団を扱うため、バイアス・交絡に対する適切な対処と的確な統計手法を知らなければ、貴重なデータを十分に生かすことができません。これまでも学会発表・論文作成などしてきましたが、今思うと、データを十分生かしきれたとは言えませんでした。その意味でMPH取得はあくまで今後の臨床研究のためのステップであり、今後臨床現場でどれだけ習熟・実践・応用出来るかが重要だと思います。

 今回得た知識は、今後の論文の吟味・データ管理・エビデンス作成・最新の医学の情報発信・患者管理など多方面に生かすことができればよいと考えています。またLA在住の多くの留学生と交流を持てたことも財産だと思っています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 現在MPH在学中の身ではありますが、卒後再び虎の門病院にて臨床の第一線に戻る予定なので、まずは2年間の間に失った臨床の勘を取り戻すのが先決です。

 MPH取得によりdramaticに仕事内容が変化するわけではないでしょうし、それは望みません。あくまで臨床+αとして日々の臨床に専念し、その後少しずつMPHで得た知識・経験・人脈を生かしていければと思います。時には疫学・統計のエキスパートの助けを借りながら、臨床家ならではの生きたデータや斬新な発想を大切にし、学んだ疫学・統計知識を応用していきたいと思います。

 また自分の経験や人脈を、海外留学や疫学・統計に興味を持った後輩臨床医に少しでも還元できれば嬉しいです。

著書など(分担執筆)
「臨床腎臓内科学」
「腎機能低下時の薬剤ポケットマニュアル」
「レジデントノート」
「新人ナースのための透析導入マニュアル」
「フットケア処置実践Q&A」など
ご自身が紹介されたマスコミ媒体など
週刊文春・日経メディカル・Medical Tribune・日経CMEなど

 

※「臨床+α」の詳細はこちらをご参照ください⇒http://rinsho-plus-alpha.jp/