• 櫻井 由美子氏 Yumiko Sakurai,DDS
  • 年齢 : 33歳
  • 現在の職業 : 歯科医師
  • 現在の勤務先 : 青山 表参道 桜井矯正歯科クリニック
  • 出身大学・学部・卒業年度 : 明海大学・歯学部歯学科・2002年卒
  • 東京医科歯科大学・歯学部 顎顔面矯正学 専攻生・2005年卒
  • ニューヨーク大学・歯学部 卒後専門課程 小児歯科・2008年卒
  • ニューヨーク大学・歯学部 卒後専門課程 矯正歯科・2009年卒
  • 臨床専門分野 : 矯正歯科
  • +αの道に入る前の臨床経験年数 : 6年
  • +αの道に入った後の臨床経験年数 : 3年
  • +αの道に入った際の年齢 : 30歳
  • +αの道の種類 : 患者様のデンタルリテラシーの向上

何故+αを選んだのか

 私は幾度となく、先進国である日本が患者様のデンタルリテラシーにおいては遅れていると言う事を痛感させられて来ました。

 15歳、米国オハイオ州にホームステイした時の事、おじいちゃん、おばあちゃんが何とも元気いっぱいなのです。そして、衝撃的なおじいちゃんのリンゴの丸かじり。なんとも健康的で印象的でした。

 19歳、カナダのバンクーバーへ短期留学した時、「アジア人を見分ける時、ブランドバックを持っているのに歯並びの悪いアジア人は日本人とすぐ分かる」と言われました。とてもショックでした。

 23歳歯科学生時代、米国アラバマ大学歯学部への交換留学の時、歯学部の学生は皆とても綺麗な歯でした。歯並びはもちろん、歯がツルっと光って歯肉もピンク色に輝き、笑った時に金属がぴかっと光る人もいません。奥歯に虫歯の治した痕のある自分がこれから歯医者になろうとしている身としてとても恥ずかしく思えました。

 27歳でアメリカの歯科医友達の家にホームステイした時、朝クリニックへ行くと20代前半のデンタルアシスタントが日本のファッション雑誌を持って飛びついてきました。何かと思えば表紙のモデルの歯が八重歯だったのです。「日本のファッションは大好きだし、日本はハイテクの国で、医学がそんなに遅れているとは思えなのに、どうして表紙を飾るモデルがこんな不健康なの!」と。

 その後何度かアメリカへ遊びに行きましたが、田舎でも都会でもみんな歯がピカピカなのです。「昨日歯のクリーニングに行ったんだ、見て見て!ここの隙間も、もう綺麗でしょ?」と鏡を見ながら元々綺麗な歯を自慢げに見せてきます。歯医者が怖い!なんて行っている人は見かけませんでした。

どのようにして+α道に入ったのか

 毎日の様にテレビ、雑誌で健康に関する情報があふれ、健康に関心の高い日本人なのに、どうして歯に対する意識が低いのだろうか? 技術的には決して遅れているとは思えず、むしろ一部は最先端を行く日本の歯科医療事情においてどうしてこの差は生じるのだろう? アメリカはどのようにして患者リテラシーを上げているのだろうか?

 このような疑問から日本で歯科臨床技術を学び、経験を積んだのちにアメリカでの臨床経験を積むため、ニューヨーク大学歯学部の卒後研修課程に入る事としました。

プラスαの道はどうであったか、何を学んだか

 ニューヨーク大学の小児歯科および矯正歯科のフルタイムのレジデントをしながら週末は一般開業医でアシスタントをし、卒後一年は矯正専門開業医で実際の勤務医として働きました。

 カルフォルニア出身のルームメイトが初日に私にこう聞きました。 「日本人は 高級ブランド品を沢山買いあさるほど裕福なのに、どうして歯にお金をかけないの?」と。「どうしてそんなイメージなの?アメリカでは日本人のステレオタイプはテレビ等でそうなっているの?」と聞いたら、「カルフォルニアでもラスベガスでもブランドショップで沢山買い物する歯並びの悪い日本人を小さい時から実際いっぱい見かけたから。」と言っていました。やはり矯正歯科医としてとてもショックをうけました。

 最初に気づいた事は、アメリカでは歯科医院にクリーニング、デンタルチェックにいく事が習慣になっていると言う事です。美容院に行く様に、身だしなみの一つとして行く感覚の様です。「半年経つからそろそろ歯医者の予約をしないと。」と様々な職業の人達の会話に出てきます。

 以前ホームステイした家庭でも、8歳の子供に毎晩デンタルフロスをする様にお母さんが言い、小さい頃から器用に歯と歯の間まで気を使って綺麗にする習慣が付いていました。また、友達の家に遊びに行ってもデンタルフロスが無い家庭は見かけませんでした。さらに8歳の子供が歯医者に定期検診に行くのについて行きましたが、何だか行く事が少し嬉しそうにも見えました。

 小児歯科での臨床経験では、もちろん嫌がり泣き叫ぶ子供もたくさん居ます。そんな子供には「次回からはどこにも虫歯がなくて偉いね!と言われる為に来てね!」と言っていました。「一度虫歯になってしまってからだと痛い思いをしないといけないから、そうなる前に大丈夫、心配ない!と言った安心をもらいに次回は来てね。」と。

 小さい頃から歯科医院で、歯の数を数えたり、磨き残しをチェックしたり、フッ素を塗って歯を強くするという様な「痛くない経験」を積んだ子供達は歯医者に行く事を恐れていません。むしろよく出来たと褒められていい思い出として残っているようです。

 次に驚いた事は、アメリカで子供に歯科矯正治療を行う事は親の使命とされている事でした。

 その背景として歯並びでその人の生まれてからの育ち、家柄が見られ、就職にも関わる程だからです。親は子供が将来良い職業につく為に必要な事として、良い大学に入る事と同様、もしくはそれ以前の問題として歯並びを整える事(矯正治療する事)を大変重要視していました。

 患者様で、「うちの家族は僕が歯科矯正する為に、郊外の安いアパートに引っ越したんだ。」と言った子供がいました。また、「本当は矯正歯科ではなくて学習塾に通いたいんだけど。。」と言う子供に、母親が「うちはお金に余裕が無いから、まずは矯正治療をして、勉強は自分で頑張りなさい!」と言い聞かせていました。そこまで優先度の高い矯正治療の意識に本当に驚かされました。

 もちろんアメリカと日本では医療制度の違いから、歯が悪くなると治療費が莫大にかかってしまう為、先に「予防しよう」と言った様な背景があるからかもれません。しかし「歯が悪くなっても日本では安く治療できるから虫歯になっても大丈夫」では、本末転倒なのではないかと思い知らされました。

 またアメリカでは小児歯科の保険が充実し、大きな病院には必ず小児歯科があります。そういった背景から小児歯科は、より国民にとって身近なものとなり、さらに歯科医院には3?6ヶ月に一回は行く習慣がついているのでどんどん歯科の予防知識が国民に浸透していく。といった様な良い循環が出来上がっているのだと思います。 「歯科医院は病気を治すばかりではなく、なる前に予防する、よりリスクを減らす。さらにはその為に矯正治療を行う。」これは自分の身は自分で守るといった個人主義であるアメリカでは、日本よりも浸透しやすかった概念なのかもしれないと感じました。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

 ニューヨークでは多様な人種の人がいて、治療自体の要望も幅広いものでした。それに対応するため、患者様の本心を引き出した上で適した治療の提供をする事が要求されていました。必ずしも歯科医師が良いと考えた事のみが望まれるわけでは無く、我々に何ができて、どうなるのか、知識を共有して患者様にとって最も必要とされる治療を進めていきます。この事が、より患者様のデンタルリテラシーの向上につながっていました。

 これらの経験を生かし、現在患者様の要望を聞くために丁寧にカウンセリングを行い、患者様の理想に近い治療の提供に心がけています。

 そして日本の方々が平均的に持っている歯医者は嫌い!と言ったようなイメージを少しずつ変えて行けたらと思っています。「痛い、怖い」と言った様な嫌なイメージがあり、歯科医院に足が向かない日本の傾向を変化させ、アメリカの様に虫歯になる前に、問題がおこる前に「何も無い、大丈夫です」と言った安心をもらえる歯科医院のイメージを少しでも多くの人に提供できたらと考えています。

 アメリカで私が訪問した歯科医院は椅子の色が全部違ってカラフルだったり、壁がジャングルの模様だったり、待合室には大きなゲーム機が必ずと言っていいほど設置され、もちろん子供と大人では予約時間も分けられ、はち会わない様になっていたり、誕生日はみんなでお祝いしたりと、楽しいイベントが盛りだくさんでした。さらに大人でも落ち着いて治療を受けられると言った様な工夫とサービス精神に溢れていました。そういった幼少時からの思い出は大人になってもきちんと歯をメインテナンスすると言った習慣へとつながって行くのだろうと思います。そんなアメリカ的な楽しい、そして暖かい雰囲気の生活に密着した歯科医院を目指しています。

 さらにニューヨークで育ち、フッ素入りの水道水で育った子供達は人種に関係なく歯は固く丈夫です。虫歯でも歯が固くて削りにくいのです。そんな経験を実体験から伝える事ができるので、どうしてフッ素で虫歯予防になるのか?どうして定期的に歯医者にクリーニングに行った方がいいのかを実感を持って伝える事ができます。実際の経験からの言葉はやはり患者様にも伝わりやいと感じています。

 そして専門である歯の矯正治療を軸にして予防歯科を多くの人に浸透させたいと考えています。 歯並びを綺麗にする事は見た目の問題だけではなく、虫歯や歯周病になりにくい歯を作る事にもつながります。歯並びや噛み合わせを綺麗にする事で快適な生活を送れるようになる。それを多くの方に知って欲しいと思っています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 日本における歯科医院のイメージを変え、楽しく通える歯科医院を目指しています。

 そして日本での歯科医療環境、文化的背景、生活環境、患者様の気持ちを研究しながら日々患者様一人一人に向けて患者リテラシーの向上に向けて微力ながら努力していきたいと思っています。

 また、小さい頃から歯科医院に嫌なイメージがあるかもしれない大人の方々にも、歯科医師に何が出来るのかを伝えていけたらと考えています。

 アメリカでの臨床経験およびそこで得た知識を生かし、きれいな歯並びが生む笑顔の素晴らしさ、健康な歯からもたらされる快適な生活、それを多くの方々に実感してもらうべく、日々研鑽を積んで参りたいと思います。