さくらをうまく描きたくて
 初稿のタイトルは、『マッチング』でした。日経メディカルで担当となってもらった Iさんのアドバイスで、タイトルを『フルマッチ』に変更しました。

 編集 Iさんとの二人三脚が始まりました。
 Iさんが掲載分ごとに分割した原稿を、週末に私が再度書き直す。月曜の朝に彼に送る。彼がウイークデイに校正し、イラストをつけて返す。私が土曜日にチェックし、再度送る。最終チェックを経て、月曜の午前0時にアップされる。自転車操業の始まりでした。(編集部注:校正の送付はほぼ毎回、掲載前の土曜となり、自転車操業の起点となっていました。この場を借りて、お詫び申し上げます)
 途中で中断したのは、私のわがままで電子書籍化を希望し、その作業が入ったためでした。大変申し訳ありませんでした。
 Iさんには、ストーリー展開から、セリフの言い回しなどの細かい点まで、チェックして頂き、本当にありがとうございました。こういうふうにして、物語はできてゆくんだと、実感しました。ストーリーの概要は変わっていませんが、初稿と最終稿では、雰囲気がずいぶん変わりました。

 ネット小説のいいところは、読者の反応がすぐにわかることです。アクセス数を見ながら、少し物語を付け加えました。
 いいときには1万人以上の人が読んでくれていたようで、デイリーのランキングでも2位とか3位になり、月間アクセスでも5位になることもありました。連載小説で多くの人に読んでもらったのは、嬉しいかぎりです。

 アクセス数から見ると、意外と読者の皆さんは、医学教育や医療よりも、人間関係、特に恋愛について興味を持つということがわかりました。
 たぶん、読者の皆さんに医学生や研修医が多く、恋も現役の方が多いのでしょう。例えば、第2章第4話の健とさくらの接近の場面(ラブホに誘うところ)などは、反響が大きく、お色気系のツイッターなどでツイートされました(笑)

 第3章第3話もアクセスがよかったです。健と恋敵の郷田の対決です。私には、まったく経験がありませんが、若い読者のみなさんの中には、恋愛バトル中の人もいたかもしれませんね。うらやましい。

 医療者ではない一般の方々からも、多くのコメントや激励を頂きました。ありがとうございました。
 「マッチング」という、人集めの話題を選んだ理由には、地方においては、一般的な話題であったからという事情もあります。
 地方は、どの業種でも<人材不足>です。
 私は先に申し上げましたとおり、高校時代は文科系の人間でしたので、同級生が地場の様々な産業で働いています。長崎は造船と観光の街ですが、それ以外にも、銀行、バス会社、スーパー、土木、自営業、飲食業…に勤める友人達と、市内の繁華街・思案橋で仕事の憂さを晴らします。

「誰か、よか人のおらん? 募集しても、全然集まらん!」
 それぞれの部署で中間管理職となり、頑張る同級生たちは、頭を抱えています。
 人口流出と人材不足による徒労や疲弊。後継者不在、人手不足による黒字倒産や経営悪化…。西果中央病院が抱える問題はどの業種にも共通するようで、医療者でない方々にも共感を頂けたようです。

北神 諒氏による紺野さくらのキャラデザイン

 イラストを描いて頂いた北神先生にも感謝しております。素晴らしい出来でした。「北神先生の昔からのファン」という読者も沢山いたようです。

「文章は、ほとんど読まないんですけど〜。北神先生のファンで〜。もっと、イラスト増やしてくれませんか〜。小説より漫画にした方がいいと思いますよ」
(怒ったらダメだ、我慢、我慢。俺はマッチング責任者だ…)
 ある女性の医学生に真顔で言われたときは、引きつった笑顔で、にこやかにうなずきました。

 かく言う私も、メインキャラの「さくら」の原画を最初に見たときは、ドキッとしました。会ってみたいなあ。会ったら惚れるだろうなと確信しました。それから、「さくら」をうまく描こうと、何度も文章を書き直したことは事実です。おかげで、最終回に近づくほど、文章は読みやすくなったと言われるようになりました。北神先生の描く「さくら」のおかげです。
 一番うまく書けたと思ったのは、最後の最後、電子書籍に載せたスピンオフ短編、さくらのその後を描いた『さくらとメープルリーフ』だと思います(宣伝で申し訳ありません)。ただ、それでも文章力はまだまだ草野球レベルで、もっと上手になりたいと思っています。精進いたします。