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「なんか納得いかないよなー」  
 週末の昼下がり、僕とジョージ、レイカの3人はファミレスにいた。あのXデーで、あんなに強い口調で准教授を追い詰めたジョージは、すっかり別人のような素っ気なさで、「まあ、大学病院なんてこんなものなんだろ」と、他人事のように答える。
 レイカが僕の肩を叩いて言った。
「まぁまぁ。なんだかすっきりしない終わり方だったけど、アプリのディーゴも盛況みたいだしさ。お父さんにも、良いプロジェクトだって褒められちゃった」
 そうだ。今回の事件を機に誕生したディーゴは、きっと世の中の医師の背中を押してくれる役目を果たすだろう。僕も、少し良い気分になって、2人に言った。
「そうだね! まだまだ僕たちは研修中だし、こんなことで暗い気持ちになっている場合じゃない。明日からも、頑張っていこう!」
「ディーゴは単純でいいな」
 ジョージは半ば呆れるが、僕たち3人は久しぶりに笑った。

(イラスト:持田 大輔)

そこへ、アロハシャツを着た宮沢がやってきた。この人が来ると一気に空気が変わる。
「悪い悪い、ちょっと風が強くて遅れちゃったよ」
「先輩、もう少しマシな言い訳、思いつかなかったんですか」
 ジョージが、すかさずツッコミを入れる。 僕の隣のソファー席に座ると、宮沢は大声で言い放つ。
「よーし、今日は好きなだけ飲んでいいぞ!」
「先輩、ドリンクバーですが」
 レイカもこの男へのツッコミ方が分かってきたようだ。そして、いつの間にか「先輩」が宮沢の呼び名として定着している。

 今日集まったのは、あの「心臓カテーテル合併症事件」の反省会&打ち上げだ。 全員、コーラを片手に乾杯する。
「それにしてもジョージの名探偵ぶりはカッコ良かったわ。Evidence Breaks Malice!」
「発音も完璧だった。顔バイアスもあるけどな、ガハハハハ!」
 レイカと宮沢に言われて、ジョージは照れ臭そうだ。そこには、大学受験の時に英語が苦手で二浪した面影はなかった。6年間、コツコツと英会話を勉強した結果だろう。