「そういえばさ…」
 振り返ると、やりとりを無言で眺めていたジョージが顎に手を当てながら言葉を続ける。
「動画を消したのって誰だ?」
 ちょうど1週間前に判明した、メインサーバーから事故のあったカテーテル動画が消されていた件のことだ。そういえば、マスターファイルテーブル(MFT)まで確認したが、消されたことまでしか分からなかった。
「誰が消したかは分からないよ。そもそもいつ消されたかも分からなかったじゃないか」
「いや、絞る方法はあるだろ。白昼堂々あのパソコンで消すってことはないだろうからな」
「どういうこと?」
 レイカが尋ねる。ジョージが何を言いたいのかは、僕にもさっぱり分からない。
「他に人がいない時間帯にカテーテル室に入っている人が怪しいってことさ」
 そう言うと、ジョージは宮沢の方を見てこう尋ねる。
「IDカードで、3月以降の夜間のカテーテル室の入室履歴を見ることはできませんかね?」
「それも管理はカテーテル室のメインサーバーだ」

 4人でカテーテル室に向かった。宮沢のIDカードでドアを開ける。夜のカテーテル室は日中とは異なり無機質でヒヤっとしている。メインサーバーの前に座り、入室履歴を調べる。
「3月以降のデータを全部抽出しよう。夜間の入室履歴を全部だ」
 ジョージの言う通りにID情報を抽出する。驚いたことに夜間も結構多くの人が出入りしている。循環器内科の医師は全員、動画消去が確認された4月8日以降、一度は夜間に入室している。とりあえず入室回数順に並べてみる。

(イラスト:持田 大輔)

「金子Jr.が一番多いな。週5ペースで夜間に出入りしている。これは臨床研究関係の仕事だろうな。ていうか、俺、3位だな」
 宮沢がニヤニヤ笑っている。カテーテル室長を兼務している岸田先生が2位なのは分かるが、なぜ総合内科医がこんなに出入りしているのか。
「夜中のカテーテル室って静かだからな。先週の木曜日もあそこで夜中に寝てたら岸田先生が入って来てマジで怒られたわ。ガハハハ」
 指を指した先にあるのは処置台。どうやらこの男はカテーテル室のド真ん中で仮眠をとっていたようだ。
「…取りあえず」
 ジョージが仕切り直す。
「全データを持っていこう。もしかしたら何かの役に立つかもしれない」
 ジョージには何か考えでもあるのだろうか。入室履歴を印刷して、またカンファレンス室に戻った。その後はアプリで助言があったように、ステントの種類などの条件別に整理するため、3月以降の全症例の動画を再確認する作業が続いた。

※「DDDDD〜ディーゴ〜」は毎週月曜に掲載します。