「これって…」
 僕が聞くと、ジョージがくぐもった声で答えた。
「3月以降の金子教授が担当したカテーテルの全データだ。医師が匿名で相談なんて反対だけど、正直、俺1人ではもう手詰まりだ」
 ジョージが自らのポリシーに反する行動を取るのは非常に珍しい。
「ちょっと待った。見せてみろ」
 宮沢はそう言いながらジョージの手元からメモを奪い取ると、食い入るように見つめた。「よくまとまっているなあ」とつぶやいて部屋を出ていき、ナースステーションでコピーして戻ってきた。
「この資料をアプリのディーゴで相談するなら日付は消せ。年齢も、70代、80代って具合に丸めて書け。あと術者と助手の名前は厳禁だ、ABCDって表現してくれ。目的が患者さんのためでも、個人情報には最大限に配慮しろ」
「はい、分かりました」

 言われた通りに訂正し、再度ディーゴに投稿した。

データを集めました。一覧を添付します。アドバイスをお願いします。
4/20 19:35 ディーゴ 


 この投稿に対し、2つのコメントが付いた。

循環器医ではないからあまり詳しくないけど、普通はロータブレーターや準緊急の方が合併症多いんじゃないの?
4/20 20:02 村医者ジャンボ


 その通りだ。ロータブレーターは病変部の石灰化が強い時に使うものだし、準緊急はバタバタするので、一般的にリスクが高いとされている。ところが、そういう症例のときの方が安全に終わっているようだ。条件別にまとめてみる必要がある。

なんだかステントに偏りがありますね。そして一番多く使っているAgariステントの時に合併症が多いのが気になります。
4/20 20:23 ミスター3時前


 確かにAgariという名前のステントが多い。これは金子教授のコダワリなのだろうか。他のステントを使う時はどういう時か。そういう点から調べてみるのも面白いかもしれない。