僕も偉そうに「復興を」と言っていたけど、被災地から帰ってきたら無口になってしまうような…。でも、だからこそ医学生など若い方には、自分の目で被災地を見てもらいたいという思いを強くしました。

 東北大では震災後にかなりの学生が病院で働いてくれました。とてもありがたかったんだけど、学生にはなるべく医療班と一緒に現地に行ってもらうようにと、対策本部には指示しているんです。とにかく見てもらい、何かを感じてもらえと。

公平 同様に、東北以外の学生にも見てほしいということですね。

里見 全国の多くの医学生に被災地を見てもらうため、交通費や滞在費を出してもらうよう、厚生労働省と文部科学省に要請しています。

 夏休みでも春休みでも、被災地を自分の目で見て、現場の医師がどのように動いたかを聞いてもらいたい。福島へも行ってほしいし。

公平 交通費だけ、あるいは病院などに泊まるスペースと食事を用意してもらうだけで、手を挙げる学生はたくさんいると思います。

里見 厚労省・文科省には、費用だけ出してもらえば、具体的な受け入れ体制は我々が考えるからと言っているんです。それでも渋るようなら、地元の大企業にでも「こんなときなんだから社会貢献せんかい!」とねじ込むつもりですが(笑)。

公平 被災地ではボランティアとして働いてもらうんですか。

里見 見学だけでもいいんです。実際に見たら、引いてしまう人はやっぱり相当いると思う。逆に「何とかしなければ」と感じ、将来復興に協力する人も出てくれると期待しています。

 自分たちが生きている時代に、日本がこんな大災害に襲われた。何を思うかは人それぞれでしょう。とにかく何が起こったかを実際に見ておくことは、これから医師になる人たちに必要なことだと強く感じています。

対談を終えて
公平順子(Junko Kouhei)
東京女子医大病院麻酔科●2000年高知医大卒、京大病院麻酔科入局、静岡市立静岡病院、倉敷中央病院勤務を経て現職。09年4月から女子医大腎臓内科大学院生。07年4〜10月に日経メディカルブログ「公平順子の『仕事も家庭もあきらめない』」を執筆。
 主要なネットワークが途絶えた状況で、大学病院内部の統括だけでなく、宮城県内の中小病院、東北の関連病院を後方支援するシステムを構築し、いち早く物資とスタッフをセットで派遣されていたことに驚きです。被害の全貌が見えない早期から各方面に次々と下された決断、そして被災各地への派遣スタッフを募ると皆が手を挙げたという話に涙が出そうになりました。被災地の医療支援から街の再興にまでつながる東北の長期的な戦略が一つひとつ実現していくことを心から願います。