津波の被害の情報を独自に集め、早くから物資と人員を送り続けた東北大学病院。他県からの支援チームが続々と駆け付けると、後方支援に徹し、沿岸部からの重症患者を拒むことなく受け入れ続けました。震災発生直後に院内災害対策本部を立ち上げ、刻々と変わる状況の中、トップダウンで決断を下し続けた、同院院長の里見進先生にお話を伺いました。


さとみ すすむ氏○東北大学副学長(病院経営担当)、東北大学病院長。1974年東北大卒。東京、秋田の病院で勤務後、77年東北大第二外科入局。88年講師を経て95年第二外科教授。99年より大学院医学系研究科外科病態学先進外科学分野教授。2004年東北大学病院長、05年東北大学副学長に就任。08年からは日本外科学会理事長も務める。主な研究業績は、生体肝移植治療成績の向上、臓器障害機序の解明と予防法の開発など。
Photo:Kiyoshi Onae

公平 大震災の発生からもうすぐ3カ月になろうとしています。津波の被害を受けた地域の医療の状況はどうなっているんでしょうか。

里見 被災地を複数のエリアに分け、中長期に滞在できる医療支援チームに各エリアを担当してもらうという体制で、診療に当たってもらっています。(5月末の)今も宮城県北だけで20チームくらいが活動していただいています。

 しかし、被災地の大半は元々が医師不足の地域です。今でこそ県外の先生方のおかげで、避難所どころか家にまで医者が来てくれるという、非常にありがたい状況になっていますが、ずっとは続けられません。

 宮城県内の医療者のマンパワーだけで、被災地の診療をカバーできる体制を早急に整えることが現在の課題です。沿岸部に5カ所くらいの診療拠点を築き、そこから避難所や在宅の方を巡回できないかと考えています。

 中長期的には、公設民営で医療保健福祉ユニットを備えた住宅地を高台につくるというビジョンを、当院で組織したプロジェクトチームが示してくれています。

公平 100年、1000年先まで見据えたまちづくりですね。

里見 しかし、その前に、この1〜2年、つまり急場をしのげる体制を一刻も早く整えなければなりません。予算配分の調整などで議論がなかなか進まない状況に、少々いら立ちも募っているのですが。

 先日、東北6県の医学部と医科大学の代表者が集まり、今後に向けてまず現状を報告し合ったんです。みなが強く懸念していたことの一つは、初期研修マッチングのアンバランスが、この大震災でますます拡大することでした。

公平 都市部と地方のアンバランスですね。

里見 元々、医学部卒業生の総数に対して初期研修の募集総数が多いから、先に埋まるのは都会の病院。都市部の募集を減らすだけでも、被災地および周辺でのマッチングを増やせると思うんです。調整はいろいろと面倒でしょうが、それくらいしないと研修医はますます来なくなると、東北は危機感を募らせています。