岩田 僕は100点満点の外来をいつも目指しているんです。患者さんの満足度も診断も治療も、誰がどう見てもパーフェクトという外来を。でも、実際は「あれをやっておけば良かった」「この一言は余計だった」とか、「この検査は無駄だった」「この薬でかえって患者さんの副作用が出ちゃった」とか、後悔ばかりで、良くてせいぜい70点ですね。

 僕は不定愁訴が大好きで、ほかの医師が敬遠する不定愁訴にパーフェクトな対応を行うこと。これが100点満点の外来の理想形ですね。頭が痛い、足も痛い、腰も痛い、さらに夫と仲が悪くてとか。夫婦仲まで思いを巡らせながら、そのすべてを解決できたらすごいですよね。

公平 そうなんですか。大方の医師は不定愁訴って、どちらかと言えば苦手ですよね。

岩田 そういう患者さんを僕に振ってくれれば診るからといって対応しているんです。

公平 でも、不定愁訴の人って、どのぐらい解決できるんですか。

岩田 よくよく探してみたら原因が見つかること、結構ありますよ。この前、8 年間熱が出るという女の子を診ましたけど…。

公平 8 年間ずっと熱が出ている?

岩田 家族性地中海熱という遺伝性疾患だったんです。ちょっと自慢ですが、主訴ですぐ分かりました。

公平 すごい。岩田先生の外来に来なければ、おそらくあと十何年も解決しなかったという感じですよね。

岩田 それから、「熱が下がらない」という患者さんがうつ病だったとか。うつ病で熱が上がることがあるんですが、診断をつけるのに半年ぐらいかかりました。でも診断がつくと、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で発熱が治っちゃう。元気にもなって、良かった良かったと。

 なかなか解決できない人もいるけど、そういう場合はのらりくらりと付き合っていきます。

公平 でも、先生の後にはどこにも送りようがないんですから、患者さんがたまっちゃうじゃないですか。

岩田 確かにちょっとずつたまっています。でも、外来は好きなので、あまり苦にならないんです。

対談を終えて
公平順子(JunkoKouhei)
東京女子医大病院麻酔科●2000年高知医大卒、京大病院麻酔科入局、静岡市立静岡病院、倉敷中央病院勤務を経て現職。2009年4月から女子医大腎臓内科大学院生。2007年4〜10月に日経メディカルブログ「公平順子の『仕事も家庭もあきらめない』」を執筆。
著書やメディアで意見を述べる岩田先生は理論派で飄々(ひょうひょう)とされているイメージだったのですが、ブログを読んでみると時折人間臭いところもあり、そのギャップがまた一段と…。対談中は1 を質問すると5を答えて下さるほどの饒舌ぶりが面白く、調子に乗ってプライベートなことまで聞いてしまいました。嫌な顔もせず答えて下さり、ありがとうございました!「寝不足でしゃべりすぎた」と後でつぶやかれてましたが、普段は無口でいらっしゃるのでしょうか?出版不況の中でも「岩田先生の本は売れる!」と定評があるそうですが、私も次の新刊を楽しみに待っています。

(8月9日、神戸市内で収録)