岩田 批評されない仕事はやったことになりませんからね。でも直接の抗議は来ませんよ。面と向かってのけんかは売らないことにしているので(笑)。学会なんかでも、どなたにお会いしても穏やかなものですよ。

 物事に対する批判はしますけど、人についての批判は一切書いていないはずです。インフルエンザ対策でも、「こういうことをやるのはよくない」とは言いましたけど、「この人だからいけないんだ」という書き方はしていません。

 厚生労働省がやることに対しても、僕は基本的にニュートラルなんです。省内に知り合いはたくさんいて、食事をする機会も多いですしね。厚労省の人にとんちんかんなことを言われた。ムカッ! といった話はたまに書きますけど。

大学の感染対策は徐々に浸透
公平 岩田先生が大学に移られたのはちょっと驚きだったんですけど、どういう心境だったんですか。

岩田 亀田で感染症科を立ち上げた後、自律的に回っていく段階まで来たかなとちょうど思っていたときに大学の話をもらいました。

 正直、最初はいやでしたよ。大学病院なんて絶対最悪だと思っていましたから。レベルが低くて、みんな臨床なんて好きじゃないだろうと。

公平 今は変わりましたか。

岩田 大学病院で仕事するのは、ある意味、最高です。問題が多すぎて、すごくやりがいがある(笑)。

公平 着任して3 年目。抗菌薬の使い方とか、院内全体で感染症への対応は変わりましたか。

岩田 かなり良くなりました。劇的とまでは言わないですが、少しずつ浸透して、このペースで行けば期待は持てるというレベルまで来ました。

 1つのメルクマールとして血液培養の2セット率がありますが、神戸大学病院もご多分に漏れず低く、2002 年ごろは全体で10 %以下だったんです。その状況から、去年は72%になりました。

不定愁訴、大歓迎!
公平 この対談に当たって、「決して美化するような内容にしないでほしい」とリクエストされたそうですが。

岩田 前に雑誌でひどい目に遭ったことがあるんですよ。だいぶ直してもらったんですが、「将来を見据えてアメリカに乗り込んでいった若きパイオニア」みたいな…。

公平 その記事、読みました。ちょっとプロジェクトX 調でしたよね(笑)。

岩田 そう。「岩田はこの時こう思った」とか書かれているんですが、「思ってねえよ」という感じで(笑)。

 自分がそこまでのファンタジーになるのは、あんまりだなと思って。挫折だらけの人生ですから。

公平 そうですか? どの辺が?

岩田 一から十までですよ。やったことはたいてい失敗してますからね。やり直したいこと、後悔して穴があったら入りたいこと、人には絶対言えないこととか、山ほどありますよ。

公平 全く伝わってきませんが。

岩田 人には絶対言わないからなんです(笑)。本当に恥ずかしいことはブログにも書けないですから。

 ただ、研修医には失敗した話を時々してますけどね。失敗談の方が大体面白くて頭に残りますから。

公平 確かにそうですね。