公平 その指定病院は何カ所くらいあるんですか。

岩田 数は結構ありますけどね。そもそも誰が教えるんだという話なんです。指定病院は100 以上あり、教える人は感染症の指導医。その指導医には感染症学会で専門医を取って5 年経つと自動的になれるんです。

 この点について、僕は学会にずっと異を唱えています。まず、専門医が指導できないというのはおかしいから、専門医と指導医を分けるのはやめてほしいと。

 そもそも、5 年で自動的に指導ができるようになるというのは、どういう理屈なのか。逆に、指導医として優秀な能力がある人でも、5年の縛りのせいで指導医になれないという問題もあります。かく言う僕も指導医になっていません。日本の学会の専門医を取って5 年経っていませんから。

 学会ではいつも言っているんですが、根強い反対があって、なかなか…。感染症の臨床をがんばろうという学生や若手がすごく増えているときに、こういう後ろ向きの議論をしていると、ムードに水を差すということを認識してほしいですね。

関連領域の専門医は統合を
岩田 もう一つは、感染症に関連した学会が複数あってバラバラということですね。これは感染症の領域に限った話ではないですが。

公平 そうですね。感染症の学会はどれがメーンなのか分からないくらいありますね。

岩田 メジャーな学会がなくて、感染症学会、化学療法学会、臨床微生物学会…と、いろいろあります。一番の問題は、学会ごとに資格が乱立してめちゃくちゃ多いことです。

公平 ××学会の認定とか、とにかくありますね。

岩田 ICD(Infection ControlDoctor)の更新のため、この前レクチャーに参加したんですけど、ビギナー向けの内容を更新のたびに聞かされるんです。苦痛ですよ。「感染症は手洗いが大事です」なんて、今さら俺に言うか? と。

 現場の医師にとっては非常に無駄が多い。統一しちゃえばいいんですよ。この前のプライマリケア系3 学会みたいに。

公平 あの統合は画期的ですよね。

岩田 日本の中で学会や団体がちまちまといがみ合っていたら、元々レベルが低い日本の感染症医療がさらに取り残されますよ。

 少なくとも、感染症の専門医資格については、各団体の資格を統合して英検みたいにレベル分けしちゃえばいいんです。ICDという基本の資格の次に取るのは抗菌薬の処方に関する化学療法学会の資格というように、レベル1、2、3…とステップアップする形にすれば、無駄な手続きや試験がなくなるとともに、上がっていく楽しみができますよね。

 外部の人からも資格の位置付けが一目瞭然になります。学会というのは仲良しクラブになりがちで、内輪のどうでもいい都合でものを決めてしまうことが多いんですが、われわれプロフェッショナルというのは、外部の都合を考えて行動しなければいけない。

 その点では、去年のパンデミックインフルエンザ騒動の中での感染症学会の行動は評価できるんです。学会が提唱するインフルエンザ診療ガイドラインをウェブサイトで公開しました。僕らの突き上げもあったんですが、社会全体が混乱した状況で、プロの集団として外部に情報発信したのは初めてのはずです。

公平 先生のブログなどを読んでいると、もっと言いたいことはあるんだけど、この辺で抑えておこうという感じですよね。それでも、私たち若い世代にとっては溜飲が下がるような感じで、読むとスッキリするところがあります。でも、上の世代の立場から読むとどうなんでしょうね。

岩田 はらわた煮えくりかえっているでしょう(笑)。

公平 直接抗議が来ないのかなと、ちょっと心配にもなるんですが。