4月にスタートを切った新専門医制度。各基本領域について、専門研修プログラムの初年度の体制をシリーズで紹介する。小児科領域は編集部からの質問に対し、日本小児科学会から寄せられた返答を紹介する。


【小児科領域】
・2018年度 研修プログラム数:171プログラム
・2018年度 総定員数:1152人
・2018年度 採用者数:562人(2018年3月15日時点)
(2017年度に小児科の研修を始めた後期研修医数:542人※)

※ 小児科学会は2017年から暫定的に各プログラムに定員を設定した研修制度を導入。

――専攻医の都市部(特に東京)への集中を指摘する声がある。2018年度における小児科領域の専攻医数について、どのように捉えているか。

 5都府県(東京都、大阪府、神奈川県、福岡県、愛知県)においては過去5年の採用実績の平均を超えないとする機構の方針、およびそれに伴う東京、福岡での2次募集中止により、大都市への小児科医の集中は起きていない。

 加えて、5都府県とその他の道府県における採用者数の比率は概ね1対1であり、プログラム制の導入前後で変動していない。この結果から、採用実数および採用比率の両方でプログラム制を導入したことによる都市部への専攻医集中は起きていないと考える。

 また、東京の基幹施設については、他の県(5都府県以外)で行う研修の実態(人×カ月)を調査した。東京都全施設の研修プログラムのうち、2018年度1年間に「他県で研修を行う割合」は平均25.4%(0%〜63.6%)であった。また、2017年度採用の専攻医(暫定制度によるプログラム制)の2年目の研修のうち「他県で研修を行う割合」は平均32.0%(0%〜85.7%)だった。研修プログラム3年目については来年まで得られないが、研修後半に基幹施設以外で研修を行う研修プログラムが多いことから、この比率はさらに高まると予想する。

 ただし、2019年度以降に東京の研修プログラムへの応募者が頭打ち、ないし減少した場合には、他県における小児科医の減少を来す可能性もある。慎重な対応が必要と考える。

――新制度導入による研修内容、専門医試験への変更は検討しているか。

 研修内容に大きな変更はない。また、新制度における専門医試験についても難易度や様式の変更などは検討していない。

 ただし、プログラム制の理念を踏まえると、最終段階での専門医試験のみならず、研修過程における臨床現場での評価を強化することが重要。そのため、専攻医と患者が関わる様子を監察して評価する「簡易版臨床能力評価法(Mini-CEX[clinical evaluation exercise])」、専攻医が実際に診療手技を行うときに指導医がチェックリストを基に評価する「DOPS」、他職種を含めた360度評価、節目ごとに設定した研修目標に基づき評価する「マイルストーン」などの考え方・評価法を導入した。これらを確実に実行していくことが重要と考える。

――現在連携を考えているサブスペシャリティー領域は?

 小児科のサブスペシャリティー領域としては、すでに日本専門医機構により周産期・新生児、小児循環器、小児神経、小児血液がいわゆる2階建て部分として承認されている。
(※編集部注 ただし、日本専門医機構が暫定的に了承したと発表しているサブスペシャリティー領域に小児科領域の領域は含まれていない)

――他の基本領域の専門医、あるいは他の領域ですでにキャリアを積んだ医師が小児科専門医資格を取得しようとする場合(ダブルボード)、研修プログラムの専攻医となる以外の方法(カリキュラム制など)は用意されているのか。

 今後、カリキュラムを作成予定。

――研修の到達度を記録するためにどのようなシステム・仕組みを用いているか。

 新制度においては定期的なフィードバックを導入し、研修手帳に記録して振り返りを促す。具体的には年1回の振り返りと指導医からのフィードバックの記録と、年2回のmini-CEXを行っている。

 さらに、これら研修の記録は専門医試験(面接)における参考資料としても活用する計画。また、日々の研修中における形式的フィードバックについては、日本小児科学会主催の「小児科医のための臨床研修指導医講習会」において各種フィードバック法(Sandwich法、5microskills、Set-GO法、SEA法など)を紹介し、各施設・各指導医に適した方法にアレンジしてフィードバックすることを推奨している。

――2018年度の専攻医採用などを踏まえ、今後の検討事項などは。

 領域により、専攻医に期待されているワークフォース(生産性の高い労働力)の質と量が異なる。横一線でスタートした新専門医制度だが、今後は領域特有の課題を個別に解決していくことも重要と考える。診療科間の医師偏在についても議論していただきたい。

 また、定員を上回る応募者があった基幹施設において、超過分の応募者を専攻医としては不採用としつつ、小児科専門研修を先送りすることで当該施設で採用した事例があった。機構に登録し、専攻医となる意思を明確に示した医師を、他施設の2次募集に応募させることなく自施設で採用すること(抱え込み)を容認するか否かについて、特に東京のプログラムで議論が必要と考える。

――若手医師へのメッセージを。

 どのような専門医になりたいのかを、自らイメージしていただきたい。それぞれのプログラムには、領域必須の共通部分の研修内容に加えて、個性がある。研修地域だけではなく、プログラムの内容をよく吟味してほしい。

 また、専門医資格の取得に至る行程を重視してもらいたい。専攻医は学生や研修医の延長ではなく、単なる労働力でもない。優れた指導者との出会いはキャリア形成にとって不可欠だと考える。