細川貂々氏
Tenten Hosokawa
漫画家、イラストレーター●1996年、漫画家としてデビュー。うつ病を患った夫との生活を漫画でつづった『ツレがうつになりまして。』は2006年に発行後、ベストセラーとなってシリーズ化。テレビドラマ、映画化もされた。メンタルヘルスの他、育児や宝塚など幅広いジャンルのエッセイ漫画を描き続けている。

 うつ病になった夫、「ツレ」との生活をユーモラスに描いた『ツレがうつになりまして。』シリーズがベストセラーになって、ドラマ化および映画化。作者の細川貂々さんの元には、うつ病に悩む患者や家族から多くの反響が寄せられた。その中には、医師からのメッセージも少なくなかったそうだ。

 「精神科ではないお医者さん、30歳代が多かったですかね。『まさか自分がうつになるとは思わなかった』というメッセージを手紙やメールで送ってくれるんです」と細川さん。振り返れば症状はいろいろ出ていたのに、気付かないまま働き続けて、気付いたら死にたくなっていた─。「追い詰められながら働く姿が目に浮かびましたね」という。

 夫が発症した当初、うつ病についての知識などまるでなく、オロオロしたり、からかったり、時にはイラついて当たり散らしてしまう。そんな妻の姿を率直に描いた点も、『ツレうつ』が多くの共感を得た理由の1つだ。

 初版発行から9年。「ツレ」さんのうつは寛解し、2人の間に男子が産まれ、息子同然だったペットのグリーンイグアナ(体長160cm!)はこの世を去った。その間も、うつ病やメンタルヘルスの講演会などに登壇し、精神科医への取材などでうつ病への理解を深めてきたという。

 「こういう本を描いたくらいだから心の病気に詳しいんだろうと思われて、今でも相談を結構受けますね」。ある意味、一般の医師以上に多くのうつ病患者に接してきたともいえる細川さんだが、知り合いでない人には、性格や生活状況などが分からないので、うかつなアドバイスはしないように注意している。

 逆に、『ツレうつ』を出版した後、周りにもうつの人が結構いることに気付き、「何かあったら、話を聞きますよ」と声を掛けているそうだ。ただ、誰もが実践できるかというと……、「私は本まで出しているから、そういう声掛けができるけど、普通だったら、なかなか言えないかもしれませんね」(細川さん)。

 うつ病患者の家族や知人から「付き合い方が分からない」ともよく聞かれるが、「接してみて、その人との経験を重ねていくしかない。症状や反応は人によってホントに違うようなので」と細川さん。「がんばれ!は禁句」とよくいわれるけれど、そう言われる方がいい人もいるのがうつ病の難しいところ。元の性格(ポジティブ思考かネガティブ思考かなど)も踏まえて、反応や行動のパターンを、接する側が学ぼうとする態度が重要ということだ。

 最初は「分からなくて当たり前」と開き直って接しているうちに、いつの間にかいい方向に向かっている。それがうつ病の人との付き合い方の極意なのかもしれない。