セーフティスクラムに携わるメンバーの多くは精神科医ではない。サポートする側がメンタルヘルスに関する知識や初期対応法を身に付ける場を確保するため、勉強会も開催している。最近は、県外からの引き合いも増えつつあり、高知医療再生機構の鈴木裕介氏を筆頭に、セーフティスクラムに参加する医師や事務職員が、若手医師のメンタルサポートの重要性を各地で訴えている。

 アドバイザーとしてセーフティスクラムを支える産業医大の菅健太郎氏は、「メンタルに不調を来しやすいのは初期研修が始まり1カ月ほどたった頃。医師であることの責任の重さや患者への想いと自分の能力や裁量が釣り合わず、誰もが一度は自信をなくす」と話す。

 5月から6月はつらくなりがちなシーズン。自分のメンタルヘルスの状態を客観的に見つめ直すとともに、周囲にどんなサポート体制があるのか、一度確認してみよう。

「許容できるライン」をまず自分で明確にする

吉川徹氏
Toru Yoshikawa
労働安全衛生総合研究所
過労死等調査研究センター

 理不尽と思える指示を受けても、踏ん張って努力をすれば、技術や知識、経験を積む貴重な機会になることは多い。一方で、他人の目が届かないところで暴言や暴力を一方的に浴びたり、好意を寄せられていると思ったらセクハラだったなど、本当に許容できないこともあったりするから、上司との関係は難しい。

 「まずは自分自身で、どこまでは耐えられて、どこからは許容できないかを線引きすることが重要」。労働安全衛生総合研究所の吉川徹氏は、こうアドバイスする。その上で万が一、暴言・暴力など身体や精神に危険を感じるような問題に遭遇した場合は、「逃げることをまず考えるべき」と言う。

 もっとも、最近は「若手医師のサポートを強化しなければならないという意識が広がりつつある」ので、逃げる前に相談してみるという選択ができる環境も増えている。高知の例にとどまらず、若手医師同士が話しやすい場を作る、院外の産業医に相談を依頼する、長時間勤務や当直体制を見直す─といった取り組みが多くの医療機関で始まっている。

 困難に直面したとき、自ら助けを求めることに躊躇してしまうかもしれない。だが、「若手をサポートしたいと思っている先輩は結構多い。落ち着いて周りを見渡し、声を上げてみれば、助けてくれる人は案外いることを覚えていてほしい」と吉川氏は話している。

日本医学会総会の認定産業医向けセミナーでは、医療機関に勤める産業医が若手医師をどうサポートするかについて議論を交わしていた。