メンタルヘルスの相談窓口は全ての医療機関にあるわけではない。たとえあったとしても、教授や副院長が産業医を兼務していて、若手医師が気軽に相談しやすい場になっていないところが大半だ。

 こうした状況で起こった1人の研修医の自殺をきっかけに、高知県では若手医師同士が互いのSOSサインを拾い上げ、より働きやすい職場環境作りをするシステムを立ち上げた。それが「セーフティスクラム」だ。

SOSを見逃すな!高知県のセーフティスクラム(*クリックすると拡大表示します)

 2010年3月から始まったこの取り組みの柱は3つ。(1)初期研修医へのセルフケアスキル特別講座の提供、(2)若手医師の声を研修環境改善につなげるホットライン開設、(3)「おせっかい」医師によるSOSの拾い上げ─だ。

 1つ目のセルフケアスキル特別講座のポイントは、初期研修スタート前に行うこと。県下の全臨床研修病院で共通のオリエンテーションとして、研修が始まるとどんなストレスが待ち受けているかを示して、注意を喚起している。ストレスにさらされる覚悟を持ってもらうために、前回までに紹介したストレスの発散方法なども伝えている。

 2つ目のホットラインでコアになるのがサポートメンバー。ストレスをためた研修医が気軽に相談できるよう、各病院の後期研修医や事務職員から1人以上を選出する。単なる相談相手ではなく、サポートメンバー同士で情報を共有し、高知医療再生機構を通じて各病院に改善を促すこともする。研修医のSOSや指導医への要望を、研修環境改善の交渉につなげられる仕組みとなっている。また、必要に応じてかつて高知で研修を経験した精神科医が話を聞く機会を作り、ストレスを発散する場も提供。不調の度合いを判断し、受診勧奨もしている。

 もっとも、仕組みがあったとしても、メンタルの不調はやはり相談しにくいもの。そこで「おせっかい」な先輩医師が、ストレスをためていそうだと気付いたら声を掛けるなど、積極的にSOSを拾い上げる役割を担う。