東日本大震災から1年。被災地では、多くの医師が医療支援のボランティアに従事した。周囲を見渡してみれば、日常の診療をこなしながら参加できる、医師ならではの社会貢献活動はたくさんある。自分のスタイルでボランティア活動に 取り組む若手医師たちが語る、その楽しさとは?


吉田明子
Akiko Yoshida
君津健康センター 君津診療所 産業医●2000年産業医科大学卒。千葉大学附属病院救急部・集中治療部、成田赤十字病院、君津中央病院などを経て04年から現職。全国医師連盟設立理事。

 「比較的少人数の集まりにお邪魔して心肺蘇生術を教えています。話す内容や資料は、相手に合わせて変えるので、少しずつバリエーションが増えてきました」

 君津健康センターの産業医、吉田明子氏。週末には、君津中央病院や成田赤十字病院の救急・集中治療科にも勤務する。そんな吉田氏が、心肺蘇生術の出前講習会を始めることになった発端は、保育園で保護者会の役員を務めたことだった。

 年に1度、保育園で開催する講習会のテーマとして、心肺蘇生術はどうかと提案した。しかしこのときは、参加希望者が多すぎて断念。それならと、“ママ友”の紹介で母子が集まるヨガサークルで講習会をしたのが最初だった。

 その後、参加者の口コミなどで、活動の場は少しずつ増えた。吉田氏は、単に心肺蘇生術だけを教えるのではなく、相手によって話す内容を大きく変える。例えば少年野球チームでは、野球の練習中によくあるけがとその対処法を教える中で、心肺蘇生術を教える。また、2010年に聴力障害を持つ子供と親の集まりに出向いた時には、災害時の助けの呼び方や、救急車の呼び方など、災害弱者のサバイバル術にも触れた。手話通訳を呼んでもらい、資料もすべてテロップ付きにした。

心肺蘇生術の講習の様子。保育園の“ママ友”の紹介で、近隣の母子が集まるヨガサークルで実施した。

 毎年、夏休みになると学童保育で話をする。「初めは、自分たちの祖先や子孫、体の仕組みなど、とっつきやすいテーマを選びます。海堂尊さんの『トリセツ・カラダ』を参考に、紙人形や人体パズルを使ったら、ものすごくウケました」。震災後の夏休みには、子供達からの要望で、心肺蘇生術を教えた。

 産業医としても救命救急医としても、健康教育の不足を感じていたという吉田氏。出前講習を通じて周囲の人々に少しでも貢献したいと考えている。「実際に相手と一緒に活動してみないと、どこに困っているか分からないので、講習もフィードバックを重ねながら繰り返すことが必要です。一度お邪魔したところには、またやりませんか、と声をおかけしています」(談)

少年野球チーム向けプレゼン資料。練習中によくあるけがについて、小学生男子が飛び付きそうな話題を盛り込んで作った。